ガス雲の動きからわかった、「宇宙竜巻」の形成過程
【2014年8月19日 国立天文台】
ブラックホールが発生源とみられる謎の天体「宇宙竜巻」の電波観測から、周辺の分子雲の動きが詳しくわかった。分子雲の衝突の影響でブラックホールへ流れ込む物質の量が一時的に増加し、それにともなって竜巻が発生したと推測される。
さそり座方向約4万光年彼方にある「宇宙竜巻」(トルネード)は、その名のとおり、らせん状の特異な形をした電波天体だ。過去の研究から、回転ブラックホールの両極方向に噴き出たジェットによって形成されたとする説が提唱されている(参照:回転ブラックホールが作る宇宙の「竜巻」)。
しかし、トルネードを作り出したとされるブラックホールのジェット噴出などの活動が見られず、どのようにしてブラックホールが一時的にジェットを噴出しトルネードを形成したかは不明だった。そのため、トルネードの正体についても議論は続いていた。
酒井大裕さん(東京大学)と岡朋治さん(慶應義塾大学)らの研究チームによる電波観測で、過去に検出された分子雲と、もうひとつ新たに見つかった分子雲の運動や速度から、2つの分子雲が過去に激しい衝突を起こしたとみられることがわかった。また、分子雲中に衝撃波が発生しているようすも観測された(画像1枚目c、d)。
研究チームではこれらの観測から、分子雲の衝突によって発生した衝撃波の影響でブラックホールへ流れ込む物質の量が一時的に増加し、ブラックホールから双極ジェットが発生してトルネードが形成されたと推測している。