これまではローテーショナル・グラディエントでコロナを処理していましたが、微細構造を出そうとすると画像が荒れる傾向がありました。 8.0cアップデータで搭載した回転アンシャープマスクを使って微細構造の抽出と滑らかさを両立し、結果を確認しながら美しいコロナ画像に仕上げられます。
回転アンシャープマスクは、コロナ画像のディテールを表現する処理手法で、画像全体に対して均一にアンシャープマスクを掛けるのではなく、放射状の構造抽出に特化して、回転したぼかし画像でアンシャープマスクを掛けます。
段階露出を行ったコロナ画像をコンポジットして元画像とします。詳細編集モードの「バッチ」メニュー「コンポジット」で自動位置合わせを行ってコンポジットします。
自動位置合わせでうまく合わない場合は、位置合わせのずれを確認しながら個別の位置を調整して、コンポジットを再度実行します。差の絶対値でプレビューの位置ずれを見やすく表示し、1枚目と2枚目、2枚目と3枚目のように順に位置を合わせます。[Ctrl] + [+]キーで画像を拡大、[Ctrl] + [-]キーで画像を縮小、[Ctrl]+カーソルキーで画像をスクロールできます。
コンポジットが終わった画像は、FITS形式(32ビット実数)で保存しておくとコロナの処理を何度でも実行できます。
回転アンシャープマスクの処理には時間が掛かりますので、元画像のサイズが大きい場合はパラメータを試すために「画像」メニュー「画像解像度」で画像を縮小します。
「ツール」メニューの「コロナ処理」を選び、「回転アンシャープマスク」を選択します。
画像を左クリックして太陽の中心を指定して、緑の円が月縁の中央に表示されるようにします。半径を増減して、緑の円が月の輪郭から2〜3ピクセル分大きくして月縁を除外します(緑の円の内側は処理されません)。
「回転角」を大きくすると太い構造が強調され、小さくすると細い構造が強調されます。もっとも大きな流線が強調されるように、「回転角」を指定します。「強さ」を大きくすると強調した流線のコントラストが上がります。「段階」を1より大きくすると複数の回転角で処理した効果が得られて、太い構造と細い構造を同時に強調できます。「回転角」が8で「段階」が4の場合は、ぼかし画像の回転角は8度・4度・2度・1度となります。
「プロミネンス偽色マスク」をオンにすると、回転アンシャープマスクで発生するプロミネンスの両側の偽色(緑色の像)を除去します。
パラメータが決まったら元画像を開き直して、コロナ処理の半径を解像度に合わせて大きくして、回転アンシャープマスクを実行します。
放射状以外の構造を強調する場合は、「フィルタ」メニュー「マルチバンド・シャープ」を実行します。大きな「半径」では太い構造が強調され、小さな「半径」では細い構造が強調されます。プレビューを見ながら複数の半径で強さを調整して、ループ状の模様を強調します。
「ファイル」メニュー「画像調整パネル」で、階調や色味の微調整を行って仕上げます。作例では中間調の調整でコロナを明るくして、色にわずかな青みを持たせています。
処理が終わった画像は、FITS形式(32ビット実数)で保存します。
コロナ画像撮影/真砂礼宏 画像処理協力/塩田和生