2007年火星接近
火星ってどんな星?
地球のすぐ外側を回る惑星
最新の太陽系像についておさらいしておきましょう。太陽系には8つの惑星があり、太陽のまわりを回っています。内側から水星−金星−地球−火星−木星−土星−天王星−海王星の順で、火星と木星の間に小惑星帯が、そして海王星の外に冥王星などの太陽系外縁天体があります。
というわけで、火星は地球のすぐ外側を回る惑星ですね。地球を除く7つの惑星のうち、とくに火星だけが「地球に接近する」と言われるのは、お互いが太陽のまわりを回るにつれて距離が極端に変化するからなのです。
2年2ヶ月ごとの接近
地球が1年(約365日)で太陽をぐるっと一回りしているのに対して、火星は約687日かけて太陽のまわりを一周しています。内側をまわる地球が火星に追いついて、追い越すときが接近の時期になるのです。
地球がほぼ円に近い軌道をもつのに対して、火星はやや押しつぶされた形の楕円(だえん)軌道をまわっているため、接近する場所によってその距離が大きく変化します。もっとも近いときで約5600万km、もっとも遠いときには約1億kmと大きな差ができます。
これが、大接近と小接近が起こる理由です。
火星の地表・大気
夜空の火星は、赤あるいはオレンジ色をした星に見えますが、これは火星の地表に大量に含まれる酸化鉄が太陽光を反射して輝いているものです。火星の大きさは地球の約半分、表面の重力も地球の38%しかありませんが、固い地表をもつ地球型惑星の1つです。
火星には大気がありますが、その組成は地球とは大きく違います。火星大気の主成分は二酸化炭素(約95%)で、次いで窒素(3%)、アルゴン(1.6%)となります。地球上に豊富にある酸素と水はごくわずかと考えられています。さらに、火星大気の大気圧は表面付近でも7.5ヘクトパスカル(地球大気は約1013ヘクトパスカル)と、ひじょうに薄いことが分かっています。
火星の地表には、クレーターや山、大きく広がった平野や、大渓谷など起伏に富んだ地形が見られます。中でも特筆すべきは、太陽系最高峰を誇る巨大火山であるオリンポス山(標高2万6000m、裾野の直径約500km)の存在と、マリネリス大峡谷の存在でしょう。
さて、もう1つ忘れてはならないのが、火星の両極に見られる「極冠」と呼ばれる白く輝く地形です。これは、ドライアイスと氷からできていると言われているもので、(火星の)季節に応じて大きさが変化することが分かっています。大きく明るい極冠は、小口径の望遠鏡でも簡単に確認できます。
観測と探査の歴史
17世紀に望遠鏡による天体観測がはじまると、火星表面の黒い模様や、白い極冠の存在が明らかになりました。やがて望遠鏡の進歩とともに細かな模様も見えるようになりましたが、19世紀末に一大センセーションが巻き起こります。イタリアの天文学者スキャパレリがたくさんの線条模様を発見し、イタリア語で溝や水路をあらわす"Canali"と名付けたところ、これが英語で運河を表す"Canal"と誤訳されてしまったために世間が大騒ぎになったのです。こうして世界の大観測者を中心に「火星運河大論争」が巻き起こりますが、運河肯定派の筆頭がアメリカのローウェルでした。
1965年に初めて探査機が火星に接近し、模様が運河ではないことが決定的になりました。さらに、1976年にはアメリカの探査機「バイキング」が火星に着陸しましたが、生命が存在する証拠は一切得られませんでした。
バイキングの火星着陸から、長い間火星を訪れる探査機はありませんでした。しかし、1996年に火星探査機「マーズ・グローバル・サーベイヤー」と「マーズ・パスファインダー」が打ち上げられ、火星探査は第二の黄金時代を迎えます。現在も、複数の探査機が火星表面や周回軌道から情報を地球に届けています。
興味深いことに、これらの探査機の観測結果から、火星にかつて水が存在したことや、現在も地下に大量の水がたくわえられていることがわかってきました。火星に運河はありませんが、昔は水が(自然に)流れていたことはどうやら確実なようです。
もっと知りたい方のために
火星をはじめとした惑星の性質については、星空ガイドのコーナー「天文の基礎知識」でも解説しています。
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「火星が地球に似ているってほんと?」「火星人存在説は誤訳から生まれたってほんと?」
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