2007年火星接近
火星観測のために
理想は大口径
火星が大接近した2003年には、視直径は約25秒にまでなりましたが、2007年12月は最大でも15.9秒です。太陽系最大の惑星である木星の視直径(約45秒)と比べたら、はるかに小さいものであることが分かるでしょう。
このように、火星は小さくて表面の模様がひじょうに見にくいので、観測するためには、光学系の優秀な、大口径の望遠鏡が欲しくなります。もし継続的な観測を行うつもりなら、最低でも口径20センチクラスの望遠鏡が必要となります。
小口径でもあきらめずに
もちろん、小口径の望遠鏡でも最接近の前後を狙えば、かなりの模様を見ることができます。視直径が15秒角を超える11月下旬から2008年1月上旬までの40日間がチャンスです。口径の小さい望遠鏡しか持っていないからと言って、あきらめることなく、望遠鏡を向けたいものです。
火星は、表面の反射能が大きく単位面積あたりの光量が豊富な惑星ですから、ある程度高倍率をかけて見ることができます。口径をセンチで表した数の20倍くらい(シーイングの良い日ならさらに高倍率)まで、思い切ってあげてしまった方が良く見えます。倍率が低いと表面が明るすぎて、淡い模様などまず見ることができなくなってしまいます。
火星がまぶしくなくなるくらいまで、とにかく倍率を上げてみてください。光学系(主鏡はもちろん接眼レンズも良いものを)が優秀で、しかも大気が安定しているときならば、あのローウェルやアントニアッジが見たような火星面を貴方も見ることができるかも知れません。また、フィルタを併用することで、模様のコントラストを上げたり、大気現象等を観測しやすくすることができます。赤やオレンジのフィルタを使えば火星表面の模様のコントラストを上げることができますから、模様が淡くて見にくい場合には是非試してみてください。最近では惑星の模様のコントラストを上げる外国製の特殊フィルタ(バーダー製など)もありますので、試してみるといいでしょう。また、黄色や緑色のフィルタは黄色い雲や白色地帯の詳細を観測するのに適しています。
視野の中の火星を長期間眺めていると、少しづつ細かい模様が見えてくるようになってきます。晴れたらとにかく望遠鏡を向けて火星を見てみましょう。
一度は大望遠鏡で見せてもらおう
惑星面を観測するコツは馴れる以外にはないと言っても過言ではありません。大きな望遠鏡で、シーイングのよいときに見る惑星面は、筆舌につくし難い美しさをもっています。はじめての人でもそこそこの模様を見ることができます(それでも、熟練した観測者の目にはかないませんが)。そして、惑星面の模様の見え方が分かれば、小口径の望遠鏡でも、かなりの模様を見ることができるようになってきます。淡い模様を見るコツが自然と身についてしまうのです。
最近では全国各地に大型の望遠鏡を備えた科学館やプラネタリウム、あるいは個人の天体観測所がありますので、そういった所で是非一度見せてもらうようにしましょう。
遥か18世紀の偉人たちの多くは、小口径の望遠鏡で惑星を観測し、運河や極冠、そして多くの模様を記録に残しています。自分の望遠鏡が小さいからと言って悲観することはありません。現在の望遠鏡は、当時とは比べ物にならないくらい、高性能なのですから……。
自分の望遠鏡で見る惑星たちの素顔は、その口径の大小にかかわらず、私たちに深い感動を与えてくれるものです。