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木星とガリレオ衛星(2012〜2013年)

2012年末から2013年にかけて、1等星だらけの冬の夜空にマイナス3等近い明るさの木星が加わります。肉眼で見ても存在感があり、さらに天体望遠鏡があれば表面の模様や4つのガリレオ衛星を観察できる、見どころの多い惑星です。

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この冬いちばん目立つ星、木星

木星のおおまかな位置

2013年1月1日午後9時の星空と木星の位置(東京)。南東が正面で、画面上部が天頂にあたる。クリックで拡大(ステラナビゲータで作成)

2012年から2013年にかけての冬、宵の南東の空でひときわ輝く星が目に入ります。太陽系最大の惑星、木星です。

木星は太陽のまわりを約12年で1周します。地球は木星に比べてずっと内側を回っているので、私たちから見ても木星は12年かけて星々の中を1周しているように見えます。この冬には、木星は「おうし座」に位置し見ごろとなっています。

木星周辺の星と星座

木星周辺の星と星座。クリックで拡大(ステラナビゲータで作成)

木星のまわりには、同じ「おうし座」に位置するアルデバランをはじめ冬の1等星が数多く輝いていますが、木星はその中でも圧倒的に明るいので簡単に見つけられるでしょう。黄色みがかかっていて、比較的またたきが少ないのも特徴です。

2012年12月3日には、太陽−地球−木星が一直線に並ぶ「衝」を迎え、地球からは一晩中木星を観察できます。このころに地球からの距離がもっとも近くなりますが、衝の1、2ヶ月程度前後でも、夜空の中での明るさや天体望遠鏡での見え方は大きく変わらず楽しめます。むしろ衝を過ぎてからの方が、日の入り後に高いところで見えるので観望しやすくなります。

木星が真南の空に上る時刻(南中時刻)を挟む約6時間のうちは、高度が30度を超えているので観測に向いています。南中時刻は2012年12月1日は午前0時ごろ、2013年1月1日は午後9時半ごろ、2月1日には午後7時半ごろとなります(地域によって多少前後します)。

2012年6月から1年間の木星の動き

2012年6月から1年間の木星の動き。クリックで拡大(ステラナビゲータで作成)

1年ごとなどの長期的な動きを見ると、木星は星座の中を西から東へ移動していますが、短い期間では、東から西へ移動しているのが見られることもあります。これは「逆行」といって、私たちのいる地球が外側を回る木星を追い抜くために見られる現象です。この、地球が木星を追い抜く瞬間が衝となります。

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モバイルアプリで探す

iステラの天体情報で木星を調べる

「帰宅する時間には木星はどのあたりに見えるのかな」「木星のそばにある星はなんだろう?」そんなときは天体ナビゲーションアプリが便利です。

iPhoneアプリ「iステラ」は、iPhone搭載の電子コンパスやGPSと連動して、端末を向けた方向にある星や星座について調べたり、また反対に、見たい天体を探すことができます。

iステラで木星を導入

木星を探すときも、このとおり。検索画面で木星を選び、矢印にしたがって端末を動かせば、実際の空で木星が見える方向にたどりつきます。

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望遠鏡で楽しめる衛星や模様

私たちの地球のまわりを回る天体は、人工衛星を除けば月しかありません。しかし木星のまわりには60を超える衛星があり、そのうち4つはとても大きくて地球から望遠鏡で簡単に観察することができます。この4つの衛星は今から約400年前に天体望遠鏡を木星に向けたイタリアの天文学者ガリレオ・ガリレイが発見したことから、ガリレオ衛星と呼ばれています。

木星とガリレオ衛星

衛星の名前は内側から順番にイオ、エウロパ、ガニメデ、カリストです。双眼鏡や小型望遠鏡でも楽に見つかり、1日おきに見るとどんどん動くのがわかります。月刊星ナビにはガリレオ衛星の位置を示すカレンダーが掲載されているので参考にしましょう。

一方、条件がよければ木星本体の模様も見ることができます。木星は主にガスでできていて、地球のように海や大陸が見えることはありません。しかし木星はおよそ10時間で1周という高速で自転していて、その回転方向に沿って何本もの縞模様があります。もっとも目立つ縞は、観測条件がよければ口径5cmの天体望遠鏡や双眼鏡でも確認できるでしょう。

口径8cm程度の天体望遠鏡なら、本格的に楽しめるようになります。見える縞の数は4〜5本で、条件に恵まれれば「大赤斑」も確認できるかもしれません。大赤斑は木星の台風のような存在で、大きさは地球2つ分、発見以来300年間消えていないと言われています。

模様の観察に挑戦するときは、天気に注意しましょう。空一面べた雲りというのは論外ですが、星が見えていても薄い雲がかかっていることもあります。また、風が強いと大気がゆらぐので、波立った水面の底をのぞくかのように模様が見づらくなります。さらに、大気の影響は、地平線に近いところほど大きくなります。なるべく木星が高く上っている時間を狙いましょう。

木星についてもっと知りたい人は、知的好奇心を刺激する天文ムックがオススメです。

手元で木星を観察したい人に、立体ジグソーパズルもありますよ。

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ステラナビゲータ9
で木星とガリレオ衛星を再現する

木星そのものを見分けるのは簡単でも、4つのガリレオ衛星を区別するのは困難です。しかもそれぞれの衛星は意外と速く動いているので、決まった時刻のそれぞれの位置を知るには天文シミュレーションソフト「ステラナビゲータ」を使うのがおすすめです。

ここでは2013年1月4日午後6時に東京で見える木星を例に、操作の一例をご紹介します。望遠鏡で観測する前に、このように下調べしておけば、どのガリレオ衛星がどこに見えているか、さらには木星の大赤斑が表側に現れているかどうかなどを知ることができます。

木星にズームイン

検索バー

まずは木星を視野の中心に入れます。検索バーに「木星」と入力して虫眼鏡のアイコンをクリックすると木星がすぐに視野の中心に入り、そのまま拡大しても木星が画面外に逃げません。

木星のまわりにはいくつかの星が見えています。それぞれの名前は何でしょうか? ここでリボンバーの「惑星・衛星」を選択して、[衛星]の[名前]をクリックします。

リボンバーから[惑星・衛星]ダイアログを表示

衛星名を表示していない状態(左)と表示した状態(右)

衛星の右にそれぞれの名前が表示されるようになりましたが、名前がついていない星が1つあります。これはたまたま木星の近くにある恒星なのです。また、「アマルテア」という衛星が木星のすぐそばに存在することもわかりました。これはガリレオ衛星よりずっと後になって発見された衛星で、普通の望遠鏡では見つけられないほど暗い天体です。

アマルテアを非表示

衛星は個別に表示の設定を切り替えることができます。先程と同じリボンバーで[衛星]の[詳細]をクリックすると[衛星]ダイアログが表示されるので、ここでアマルテアの[表示]をオフにします([名前]だけをオフにしてもかまいません)。[OK]を押すとアマルテアという文字が表示されなくなります。

より見やすい表示形式に変更

天体情報パレット

さて、木星を大きく拡大していた場合は、日周運動によって木星がどんどん動いてしまいます。そこで木星が常に視野の中心にいるように視野を固定しましょう。木星を左クリックすると左の図のように「天体情報パレット」が表示されるので、[中央固定]ボタンをクリックします。これとは別に、右クリックで表示されるマウスメニューから[中央固定]を選択するという方法もあります。

表示形式の切り替え

ステラナビゲータの初期状態では、星図は地平線が下の「地平座標」で表示されます。経緯台式架台に載せた望遠鏡や双眼鏡の見え方を再現するならこのままでも構いませんが、赤道儀式架台で観測する場合は「赤道座標」モードに切り替えましょう。設定バーの[表示形式]をクリックして[赤道座標]を選ぶとすぐに星図の傾きが変わります。

赤道座標と黄道座標

惑星のシミュレーションでは、この他に「黄道座標」という表示形式も便利です。この形式では太陽の通り道である黄道が画面に水平になるので、黄道に対してほぼ平行に公転・自転している木星も水平になり、ガリレオ衛星の軌道の傾きが見やすくなります。なお、現在の木星は赤道と黄道が平行になっているところに位置しているため、赤道座標と黄道座標ではあまり目立つ差が現れません。

視野を180度回転

望遠鏡をのぞいているときは視野が反転・回転していることに注意が必要です。通常の望遠鏡であれば天体の像は180度回転していて、天頂プリズムを使っている場合は左右が反転します。設定バーの[視野回転]から適切な見え方を選択して、望遠鏡での見え方を忠実に再現しましょう。

時間を進めると…

ステラパッドで時間を進める

時間経過による変化

ステラパッドに表示されている日時を左クリックすると数字が1つ増えて、右クリックすると1つ減ります。たとえば時刻が18時だったとすると、「8」の部分を左クリックすれば19時になり、その状態で右クリックすれば18時に戻ります(「1」の部分をクリックすると10時間単位で変わります)。

1時間ずつ時間を進めてみると、衛星が意外に大きく移動することがわかります。ガリレオ衛星の中で最も内側を回るイオはわずか2日弱で木星を1周します。また、木星の表面を注意深く見ていると、衛星が木星と重なったり、衛星が太陽光を遮って影ができていることもわかります。

木星とガニメデのズームアップ

ステラナビゲータで表示される惑星の表面には、探査機などが撮影した画像を元にしたリアルな模様が表示され、現実の回転に合わせて変化します。ガス惑星である木星の模様は少しずつ変化していくため完璧な再現は不可能ですが、最大の特徴である大赤斑の位置は観測データに基づいてシミュレートされています(160年前から現在までの範囲で)。

実は、惑星だけでなく衛星の模様も再現されています。通常の表示モードでは確認しづらいのですが、フライトモードなどを使って大きく拡大してみるとよくわかります。