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火星を見よう(2016年5月31日 地球最接近)

2016年5月31日、約2年2か月ぶりに火星と地球が最接近します。約7500万kmまで近づく中接近で、この前後の期間は比較的大きく見えるので、火星の模様を観察する好機です。

この時期、火星はさそり座の近くを動いており、1等星アンタレスと並んで見えます。2つの星が赤さ、明るさを競い合う様子は肉眼でも美しく眺められます。近くには土星も輝いています。

火星を見つけよう

ひときわ目をひく赤い星

赤い星として有名な火星は、2016年5月22日に地球を挟んで太陽と反対に位置する衝となります。このころは一晩中夜空で輝いているので、観察に適しています。

5月から6月ごろは、宵のころに南東の空、深夜に南の空に3つの明るい星が集まっている様子が見えます。3つのうち最も明るい赤い天体が火星、最も暗い赤い天体はアンタレスです。残る1つは土星です。

2016年はとくに、さそり座の1等星アンタレスと並んでいる光景が見ものです。アンタレスの名前の由来は「アンチ・アレス(火星に対抗するもの)」という言葉ですが、その由来を実感できるのが今シーズンというわけです。

2016年10月16日 19時の星図

2016年10月中旬 19時の空(東京)。火星は10月2日から1週間ごとの位置、金星と土星は10月30日の位置を表示。月の表示は消してある。上旬は20時、下旬は18時ごろに同じような空が見える。クリックで星図拡大(ステラナビゲータで星図作成、以下同)
5月23時6月22時7月21時8月20時9月20時

星座の中を動く火星

火星は惑星なので、星座の中を動いていきます。4月中旬ごろまでは天球上を西から東へと順行していましたが、その後は6月末まで東から西へと逆行します。この逆行期間中、5月22日に衝となり、5月31日に地球と最接近します。最接近のころ、火星はマイナス2等級まで明るくなり、アンタレスはもちろん土星よりも圧倒的に目立って見えます。

7月以降は再び順行に移り、8月24日ごろにアンタレスと見かけ上の最接近が起こります。

期間中の火星の動きや明るさの変化を、スケッチや写真で記録に残すと面白いでしょう。

並んでいる土星も、ぜひ一緒に観察してみてください。

【特集】土星を見よう(2016年)

2016年2月から10月の火星と土星の動き。火星と土星は実際よりも大きく描画している
他の動画は ›› アストロアーツYouTubeチャンネル [YouTube]

火星と月などとの接近

火星・土星・アンタレスの近くに月が接近してくることもあります。今年起こる、火星と他の天体との接近現象は以下のとおりです。このうち月との接近は、やや間隔は大きくなりますが前後の日にも見ることができます。アンタレスや土星、海王星との接近は、しばらくの期間中見られます。

日付 現象備考
4月上旬〜5月中旬 アンタレスと接近最接近4月27日ごろ
4月25日 月(月齢17〜18)と並ぶ明け方/深夜から翌日明け方
5月21日 月(月齢15)と並ぶ深夜から翌日明け方
6月17日 月(月齢12)と並ぶ夕方から翌日未明
8月上旬〜9月上旬 アンタレスと大接近夕方〜宵
最接近8月24日ごろ
8月中旬〜下旬 土星と接近夕方〜宵
最接近8月25日ごろ
10月8日 月(月齢7)と並ぶ夕方から宵
11月6日 月(月齢7)と接近夕方から宵
12月5日 月(月齢6)と接近夕方から宵
12月下旬〜
2017年1月上旬
海王星と大接近夕方から宵
最接近
2017年1月1日ごろ

星図(12月5日 月と火星が接近)

12月5日の夕方から宵、月と火星が接近。画像クリックで現象ガイドの解説ページ

モバイルツールでシミュレーション

iOS用の「iステラ」「iステラ HD」やアンドロイド用「スマートステラ」などのモバイルアプリを使うと、火星のある方向、周りの星や星座の名前が簡単にわかります。

他の製品は ›› モバイル製品情報

スマートステラでのシミュレーション

8月24日に火星と土星、アンタレスが並ぶ様子をスマートステラで表示。コンパス連動時には実際の空で見える方向までナビゲーションしてくれる

表面の模様を観察しよう

火星は直径が地球の半分ほどしかない小さい惑星なので、表面の模様を見るのはやや難易度が高いものですが、最接近のころは観察のチャンスです。ぜひ天体望遠鏡を向けてみましょう。

最接近となる5月31日の火星の視直径(見かけの大きさ)は18.6秒角で、同じ日の木星の半分、土星(環を含まない本体)とほぼ同じです。また、100倍に拡大すると、肉眼で見た満月とほぼ同サイズになります。4月下旬から7月中旬までは視直径が15秒角を超えており、口径10cm程度の天体望遠鏡でも模様が見やすいでしょう。

火星は約24時間40分で自転しているので、見える模様も日時によって変化します。シミュレーションソフトなどでどんな模様が見やすいのか確かめておきましょう。とくに目立つのは「大シルチス」と呼ばれる暗い部分です。

火星の地図

探査機バイキングが撮影した画像から作られた火星の地図に主な地名を入れたもの。望遠鏡で見たイメージに近いように、上を南にしている。クリックで拡大(photo: NASA/JPL/USGS)

  • 倍率を高くすると像が揺れやすくなります。風が弱いときが観察に適しています。また、火星が南中する前後の高いところにあるときは大気の影響が小さくなるので、低いときよりもよく見えます。
  • 一見しただけでは、模様の濃淡は見えません。じっくり眺めていると、少しずつわかるようになってきます。
  • 公開天文台や科学館の観望会では大きい天体望遠鏡で火星を見ることができます。ぜひ参加してみましょう。
    観望会情報は「パオナビ」でチェック ›› PAO Navi:全国プラネタリウム&公開天文台情報

ステラナビゲータで見え方をシミュレーション

天文シミュレーションソフトウェア「ステラナビゲータ」では、火星の模様の見え方や星空中の動きを正確にシミュレーションできます。観測や撮影に便利です。

ステラナビゲータ活用法はこちら ›› ステラナビゲータで火星をシミュレーション

「ステラナビゲータ」で火星をシミュレーション

天体望遠鏡や双眼鏡の購入はオンラインショップで

アストロアーツのオンラインショップでは、天体望遠鏡や双眼鏡を多数取り扱っています。火星の模様やアンタレスとの共演を、実際に観察してみましょう。ライトやクッションなどの便利グッズや、太陽系のことが詳しくわかる書籍などもあります。

天体望遠鏡や双眼鏡はアストロアーツオンラインショップで

2年2か月ごとに接近する理由

火星の公転周期(太陽の周りを1周する期間)は約687日です。火星が太陽の周りを1周する間に地球は約2周します。この公転周期の違いから、2つの惑星は約2年2か月ごとに隣り合わせとなり、距離が近づきます。

ただし、火星の軌道は楕円形なので、軌道上のどこで地球と接近するかによって距離が大きく変化します(地球の軌道も楕円形ですが、火星ほどはつぶれていません)。大接近のときには6000万km弱まで近づき、反対に小接近のときには1億kmも離れます。今回の最接近距離は7500万kmで、やや大接近寄りの中接近といったところです。次回2018年7月31日は、5800万kmの大接近となります。

星ナビ6月号で火星特集

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月刊『星ナビ』2016年6月号(5月2日発売)では火星の見え方や観察方法を特集で紹介しています。

2014年4月14日(前回の最接近)から2018年7月31日(次回の最接近)まで、4年4か月間の地球と火星の動き

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