2016年5月31日、約2年2か月ぶりに火星と地球が最接近します。約7500万kmまで近づく中接近で、この前後の期間は比較的大きく見えるので、火星の模様を観察する好機です。
この時期、火星はさそり座の近くを動いており、1等星アンタレスと並んで見えます。2つの星が赤さ、明るさを競い合う様子は肉眼でも美しく眺められます。近くには土星も輝いています。
火星・土星・アンタレスの近くに月が接近してくることもあります。今年起こる、火星と他の天体との接近現象は以下のとおりです。このうち月との接近は、やや間隔は大きくなりますが前後の日にも見ることができます。アンタレスや土星、海王星との接近は、しばらくの期間中見られます。
火星は直径が地球の半分ほどしかない小さい惑星なので、表面の模様を見るのはやや難易度が高いものですが、最接近のころは観察のチャンスです。ぜひ天体望遠鏡を向けてみましょう。
最接近となる5月31日の火星の視直径(見かけの大きさ)は18.6秒角で、同じ日の木星の半分、土星(環を含まない本体)とほぼ同じです。また、100倍に拡大すると、肉眼で見た満月とほぼ同サイズになります。4月下旬から7月中旬までは視直径が15秒角を超えており、口径10cm程度の天体望遠鏡でも模様が見やすいでしょう。
火星は約24時間40分で自転しているので、見える模様も日時によって変化します。シミュレーションソフトなどでどんな模様が見やすいのか確かめておきましょう。とくに目立つのは「大シルチス」と呼ばれる暗い部分です。
天文シミュレーションソフトウェア「ステラナビゲータ」では、火星の模様の見え方や星空中の動きを正確にシミュレーションできます。観測や撮影に便利です。
ステラナビゲータ活用法はこちら ›› ステラナビゲータで火星をシミュレーション
アストロアーツのオンラインショップでは、天体望遠鏡や双眼鏡を多数取り扱っています。火星の模様やアンタレスとの共演を、実際に観察してみましょう。ライトやクッションなどの便利グッズや、太陽系のことが詳しくわかる書籍などもあります。
火星の公転周期(太陽の周りを1周する期間)は約687日です。火星が太陽の周りを1周する間に地球は約2周します。この公転周期の違いから、2つの惑星は約2年2か月ごとに隣り合わせとなり、距離が近づきます。
ただし、火星の軌道は楕円形なので、軌道上のどこで地球と接近するかによって距離が大きく変化します(地球の軌道も楕円形ですが、火星ほどはつぶれていません)。大接近のときには6000万km弱まで近づき、反対に小接近のときには1億kmも離れます。今回の最接近距離は7500万kmで、やや大接近寄りの中接近といったところです。次回2018年7月31日は、5800万kmの大接近となります。
月刊『星ナビ』2016年6月号(5月2日発売)では火星の見え方や観察方法を特集で紹介しています。