【特集】2020年12月 木星と土星の超大接近

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2020年12月中旬から下旬にかけて、夕方の南西の空で木星と土星が大接近して見えます。最接近する21日前後には月の見かけの直径よりも近づく「超大接近」となります。

今回ほどの接近は約400年ぶり、次回は約60年後という、非常にレアな現象です。ぜひ観察してみましょう。

肉眼、双眼鏡で観察

2020年12月の木星と土星は、夕方から宵の早い時間帯に南西の低空に見えています。2つ並んだ天体のうち、明るいほうが木星です。

日の入りから木星・土星が沈むまでは、12月上旬で3時間ほど、下旬では2時間ほどしかありません。空が暗くなり始めるころには、木星と土星はかなり低いところにあります。南西方向の空が開けた、見晴らしが良いところで観察しましょう。

低空ということは、山並みやランドマークと一緒に眺めたり撮影したりするのには好都合です。ぜひ良い場所を見つけてみてください。17日には細い月も接近して、3天体の美しい共演が見られます。

2020年12月の木星と土星の見え方(ステラナビゲータでシミュレーション)。
[YouTube]

木星と土星の間隔

12月中の両惑星の間隔は約2度未満です(天体の見かけの大きさや間隔は角度で表します)。2度は50~60cm先の1円玉の見かけサイズと同じくらいです。つまり今回の大接近では、1円玉を持った腕を伸ばすと木星と土星が両方とも隠れてしまいます。

17日から25日ごろまでは間隔が0.5度未満となります。0.5度は50~60cm先の5円玉の穴の見かけサイズくらいなので、この期間は腕を伸ばして持った5円玉の穴を通して木星と土星が両方とも見えるほどの「超」大接近になります。

最接近するのは21日、22日ごろで、間隔は約0.1度になります。肉眼では1つの星にしか見えないかもしれません。どんなふうに見えるか(見えないか)、確かめてみましょう。

›› 天体写真ギャラリー「2020年11月~2021年1月 木星と土星の大接近」

木星と土星の接近の様子

木星と土星の接近の様子。視野円の直径は2度(50~60cm先の1円玉の大きさ)。木星と土星は大きめに描いている。画像クリックで表示拡大(ステラナビゲータで星図作成)。

参考リンク:

天体望遠鏡で観察

木星と土星の間隔が0.5度未満となる17日から25日ごろは、天体望遠鏡の同一視野内でも両惑星を観察することができます。0.5度というサイズは月の見かけの大きさとほぼ同じなので、月の全体が見えるくらいの倍率(100倍くらいまで)であれば観察可能です。100倍くらいあれば木星の縞模様と土星の環を同時に見ることができるでしょう。空の条件が良ければ、縞模様や環だけでなく、衛星も見えるかもしれません。

※天体望遠鏡で見える範囲(視界の広さ)は、アイピース(接眼鏡)の種類にもよりますが、だいたい「50÷倍率」(単位:度)くらいです。50倍なら約1度、100倍なら約0.5度で、倍率が高くなるほど狭くなります。

最接近する21日、22日ごろの木星と土星の間隔は約0.1度(月の見かけサイズの20%ほど)となり、300倍ほどの超高倍率でも同一視野内に見えます。

後述するように、これほどの大接近は397年ぶりとなりますが、当時の観察条件では見えなかった可能性が高い現象です。今回の超大接近は「人類が超高倍率の望遠鏡の同一視野内で木星と土星を観察する、初めてのイベント」といえるでしょう。

木星と土星の超大接近の様子

2020年12月21日と22日の木星と土星の見え方。図は正立像で上が天頂方向。35mm判換算12000mmの直焦点撮影の写野角も表示(写野角の傾きは赤道座標に揃えてある)。画像クリックで表示拡大(ステラナビゲータでシミュレーション)。

実際には、まだ空に明るさが残っていることや、低空で大気の影響を受けやすいことにより、スッキリした惑星像を見るのは難しいかもしれません。肉眼と同様、ぜひこちらも見え方を確かめてみてください。公開天文台や科学館での天体観察会に参加したり、インターネット中継を見たりするのも良いでしょう。

拡大しての写真撮影にも挑戦してみてください。最接近のころは35mm判サイズ10000mm前後の写野角にも収まりますし、両惑星の並び方の変化を追うなら数百mmでもじゅうぶんです。天体望遠鏡での見え方を調べたり画角を検討したりするのには天文シミュレーションソフト「ステラナビゲータ」が便利ですので、ぜひご活用ください。

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接近現象について

木星は約12年で太陽の周りを1周し、土星は約30年で1周します。太陽から見ると、この2つの惑星は約20年ごとに同じ方向に並びます。このように同じ方向に並ぶことを「会合」と呼び、「木星と土星の会合周期は約20年である」と表現します。

会合周期が20年であることは、次のように考えるとわかりやすいでしょう。木星の公転周期は12年なので、木星は1年で軌道上を30度(360度÷12)動きます。同様に公転周期が30年の土星は1年で12度(360度÷30)動きます。すると、1年の間に両惑星の間隔は18度ずつ開いていくことになり、360度(1周)÷18(度/年)=20年の周期になる、というわけです。

※実際には私たちが太陽からではなく地球から見ていることや、それぞれの惑星の軌道が楕円であることなどの理由により、接近現象の起こる間隔は多少変化しますが、平均的には約20年です。

2001年から2100年の木星と土星の軌道上の動き(ステラナビゲータでシミュレーション)。

約20年周期で起こる最接近ですが、毎回「超大接近」になるとは限りません。これは、木星と土星の公転軌道がわずかに傾いているため、太陽(地球)から軌道平面上で同じ方向に見えても軌道の上下方向にずれるためです(新月のたびごとに日食が起こるわけではない、というのと似た考え方です)。

今回の場合は木星と土星の軌道が見かけ上交わる点の付近での接近なので超大接近となります。約0.1度間隔まで近づくのは、前回は約397年前でした。次回は約60年後まで起こりません。非常に珍しい現象だということがわかるでしょう。

2080年3月15日の木星と土星の大接近

2080年3月15日の木星と土星の大接近の様子。明け方の南東の低空に見える。画像クリックで表示拡大(ステラナビゲータで星図作成)。

過去と未来の主な最接近

地球中心から見て最接近となる日(日本時)とその離角(間隔)。データはステラナビゲータにより算出。

日付 離角備考
1226年03月05日 0.04度過去1000年間での最接近
一部で「前回の、約800年前の現象」と紹介されているもの
1623年07月17日 0.09度前回の、0.1度未満の接近
397年前の現象。太陽に近いため実際には見えなかったと思われる
1961年02月19日 0.23度前回の、0.5度未満の接近
1981年01月01日 1.05度「三連会合」の1回目。約半年の間に3回、地球から見て会合が起こった
1981年03月05日 1.06度「三連会合」の2回目
1981年07月24日 1.10度「三連会合」の3回目
2000年05月28日 1.15度太陽に近い
2020年12月22日 0.10度今回
2040年10月31日 1.13度太陽に近い
2060年04月08日 1.12度
2080年03月15日 0.10度次回の超大接近
2100年09月19日 1.21度21世紀最後

ステラナビゲータの画面

ステラナビゲータの「会合検索」機能で接近を一覧表示。天体情報パレットなどにも情報が表示されます。画像クリックで表示拡大。