2020年6月以降の金星は「明けの明星」として見えています。詳しくは「明けの明星」特集ページをご覧ください。
2019年の11月ごろから2020年の5月ごろまで、宵の明星の金星が見ごろです。日の入り後に西の空で輝く様子はよく目立ちます。
時おり細い月と並ぶ光景は、とくに美しい眺めです。また、木星・土星や「すばる」との大接近も見ものです。肉眼や双眼鏡で見たり、写真に撮ったりしてみましょう。
目次
金星を見つけよう
宵の明星
金星は2019年11月ごろから2020年5月ごろまで、「宵の明星」として見えています。夕方から宵のころに西の空でひときわ明るく輝いているので、一目でそれとわかります。
3月上旬から4月中旬ごろまでは、日の入りから1時間後(東京で19時ごろ)の高度が30度を超えているので、とくによく目立ちます。西日本では22時を過ぎてもまだ地平線上にあり、思った以上に遅い時間帯まで金星が見えるかもしれません。
形が変わる金星
地球・金星・太陽の位置関係により、金星は月のように大きく満ち欠けして見えます。また、月と異なり、金星は見かけの直径も大きく変化します。形や大きさの変化は肉眼ではわかりませんが、倍率が高めの双眼鏡や天体望遠鏡で見るとよくわかります。天体観察会などに参加して、欠けた姿をぜひ観察してみてください。
金星に関する現象カレンダー:
細い月と共演/木星・土星、「すばる」と大接近
およそ1か月に1回くらいの頻度で、金星と細い月が並んで見えることがあります。金星の輝きはそれだけでも美しいものですが、地球照(地球で反射した太陽光に照らされ、月の暗い側がうっすら見える現象)を伴った幻想的な細い月と金星が夕空に並ぶ光景は、さらに見事な眺めとなります。金星と月の接近は肉眼でもよく見えますが、双眼鏡があるといっそう美しさが際立って感じられることでしょう。
また、金星と、木星や土星、プレアデス星団「すばる」との大接近も起こります。最接近のタイミングだけでなく、その前後の日で並び方が変化していく様子も楽しみです。
地上風景も入れた写真撮影にも、ぜひ挑戦してみてください。空の色や雲の形、街明かりの様子は刻一刻と変わっていきます。シャッターチャンスを逃さず、共演を記録してみましょう。
日付 | 現象 | 備考 |
---|---|---|
11月下旬 | 木星と大接近 (›› 解説) | 夕方 最接近24日ごろ |
11月28日 | 細い月(月齢2)、木星と並ぶ (›› 解説) | 夕方 |
11月29日 | 細い月(月齢3)、木星と並ぶ (›› 解説) | 夕方~宵 |
12月上旬 | いて座の ヌンキと大接近 | 夕方~宵 最接近6日ごろ |
12月上旬 ~中旬 |
土星と大接近 (›› 解説) | 夕方~宵 最接近11日ごろ |
12月29日 | 細い月(月齢3)と接近 (›› 解説) | 夕方~宵 |
1月上旬 ~中旬 |
やぎ座の デネブアルゲディと大接近 | 夕方~宵 最接近8日ごろ |
1月下旬 | 海王星と大接近 | 夕方~宵 最接近27日ごろ 12等級差 |
1月28日 | 細い月(月齢3~4)と接近 (›› 解説) | 夕方~宵 |
2月27/28日 | 細い月(月齢4/5)と やや離れて並ぶ | 夕方~宵 |
3月上旬 ~中旬 |
天王星と接近 (›› 解説) | 夕方~宵 最接近8日ごろ 10等級差 |
3月25日 | 東方最大離角 (›› 解説) | 46.1° |
3月28日 | 細い月(月齢4)と やや離れて並ぶ | 夕方~宵 |
3月下旬 ~4月上旬 |
プレアデス星団と大接近 (›› 解説) | 夕方~宵 最接近4月4日ごろ |
4月下旬 ~5月下旬 |
おうし座の エルナトと大接近 | 夕方~宵 最接近5月11日ごろ |
4月26/27日 | 細い月(月齢3/4)と やや離れて並ぶ | 夕方~宵 |
4月28日 | 最大光度 | -4.5等級 |
5月13日 | 留(りゅう) | この日を境に、天球上を東→西に動く(逆行する)ようになる |
5月下旬 | 水星と大接近 (›› 解説) | 夕方 最接近22日ごろ |
5月24日 | 細い月(月齢2)、水星と接近 (›› 解説) | 夕方 |
6月 4日 | 内合(›› 解説) |
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6月21日の夏至の日に部分日食、10月に火星最接近、年末ごろに木星と土星が超大接近、……2020年にも楽しみな天文現象や面白い天体がたくさんあります。もちろん、日々の星々や月の満ち欠けなども美しいものです。
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金星に関するマメ知識
灼熱の惑星
太陽系で地球の1つ内側を公転している金星は、大きさも質量も地球によく似た惑星です。自転周期が243日と非常に長く(惑星のなかで最長)、しかも公転の方向と逆回転に自転している(惑星の中で金星と天王星のみ)という、不思議な特徴があります。
金星は二酸化炭素を主成分とする厚い大気を持ち、地表付近の大気圧が90気圧にも達します。また、温室効果で地表の温度は約470℃にもなります。
この高温高圧に加えて、金星では二酸化硫黄の雲から硫酸の雨が降っており、上空には時速400kmと自転の60倍も速い暴風(「スーパーローテーション」)が吹いています。金星は、ローマ神話の美の女神「ウェヌス(ヴィーナス)」の名を冠した惑星とは思えないほどの過酷な環境が広がっているのです。
金星探査機「あかつき」
2010年に打ち上げられた日本の探査機「あかつき」は、2015年12月から金星の周回探査をしています。6種類のカメラで大気や雲の動き、温度などを観測し、金星の素顔を解き明かそうとしています。
- JAXA:金星探査機「あかつき」(PLANET-C)
- ISAS:金星探査機「あかつき」PLANET-C
太陽系内の動き
金星は太陽系の中で地球よりも内側を公転する内惑星で、225日で太陽の周りを一周します。地球より内側なので、地球の夜側(太陽の反対方向)に見えることはなく、必ず夕方の西の空(宵の明星)か明け方の東の空(明けの明星)に見えます。
とくに、見かけ上太陽から最も離れるころには、日の入り後や日の出前の地平線からの高度が高くなり見やすくなります。金星が太陽から東に最も離れるときを「東方最大離角」といい、「日の入りのころに夕方の西の空」で見やすくなります(東と西を間違えないように注意)。反対に太陽から西に最も離れるときは「西方最大離角」で、「日の出のころに明け方の東の空」で見やすくなります。最大離角のころに金星を天体望遠鏡で観察すると、半月状に見えます。
また、地球から見て金星が太陽と同じ方向になる状態が「合」で、太陽の向こう側にあるときを「外合」、手前(太陽と地球の間)にあるときを「内合」といいます。内合の前後の金星は地球に近いので直径が大きくなり、さらに非常に細くなります(見かけ上太陽に近いので、観察にはじゅうぶん注意しましょう)。