ルーリン彗星(C/2007 N3)
2月下旬、ルーリン彗星が地球に接近して4等級の肉眼彗星になると期待されています。接近中のルーリン彗星は太陽の反対方向に位置しているので、一晩中観測できます。また、光度や尾の変化にも注目しましょう。
ルーリン彗星とは
ルーリン彗星(C/2007 N3)は、2007年7月に台湾のルーリン(鹿林)天文台の41cm望遠鏡による観測で発見された彗星です。太陽系外縁部から来たと推定されていて、軌道周期は数万年以上もあります。
1月11日には太陽に約1.2天文単位(1天文単位は地球から太陽までの距離)まで接近しました。今後は地球に近づき、それに伴って明るさおよび星空の中を移動する速度も大きくなっていきます。地球への最接近は2月24日で、距離は0.4天文単位です。
ルーリン彗星の特徴は、地球に接近する際、ちょうど太陽の反対側を通っていく点にあります。最接近直後の2月26日が衝(太陽・地球・ルーリン彗星が一直線に並ぶ)なので、彗星がもっとも明るい時期には一晩中観察できるのです。
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星空の中での動き
ルーリン彗星は、星座の中をほぼ黄道に沿って東から西へと移動します。2月初旬まではてんびん座の中をゆっくりと動き、2月11日からはおとめ座に入ります。予想によれば、このころに明るさが4等台に達します。
16日から17日にかけてスピカの北約3度を通過し、地球に最接近する24日から25日にかけては土星の南約3度を通過します。どちらも、ルーリン彗星と天体が双眼鏡の同じ視野で観察できる近さです。
24日前後のルーリン彗星は、その明るさだけでなく変化にも注目したいところです。最接近時に、彗星と地球がすれ違う位置関係にあるので、彗星の見かけの移動速度は速くなります。双眼鏡を使えば1時間もたたないうちに動きがわかるほどなので、土星などの明るい星と比べながら観察してみましょう。
最接近後、ルーリン彗星は暗くなりながらさらに西へ移動します。28日にレグルスと接近し、3月6日から7日にかけてはかに座のプレセペ星団(M44)のすぐ南を通ります。3月の上旬を過ぎたころには明るさが6等台となり、肉眼で見えなくなります。
- 特集記事でルーリン彗星の見どころや天体との接近について解説
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尾の変化
もしかすると、ルーリン彗星は東西に尾が伸びた珍しい姿を見せてくれるかもしれません。
彗星には、放出されたチリが軌道面上に広がってできる「ダストテイル」と、ガスが太陽の反対側に流れてできる「イオンテイル」という2種類の尾があります。ルーリン彗星が衝となる26日前後に尾がじゅうぶん長くなっていれば、イオンテイルが東に、ダストテイルが西に伸びていることでしょう。
数日間隔で観察すれば、全体として西に伸びていた尾が、26日ごろを境に彗星の東側に見えるようになるのがわかります。なるべく写真に残して楽しみたい現象です。
どうやって見る
市街地から離れた空の暗いところへ出かければ、ルーリン彗星を肉眼で見ることも可能です。しかし、彗星の動きや尾を楽しむためにも、双眼鏡を使うのがおすすめです。アストロアーツオンラインショップでは、天体観察に適した双眼鏡を多数取りそろえています。
動きの速い彗星を確実に見つけるには、あらかじめ星図で調べておくことが重要です。天文シミュレーションソフトウェア「ステラナビゲータ Ver.8」を使えば、任意の時刻の星空を再現してルーリン彗星の動きを正確に知ることができます。この特集の星図や軌道図も、ステラナビゲータ Ver.8を使って作成しています。
iPhoneやiPod Touchをお持ちの方には、星空表示アプリケーション「iステラ」がおすすめです。ルーリン彗星の正確な位置を、いつでもどこでも美しい画面表示で確かめることができます。
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関連リンク
- アストロアーツ彗星ギャラリー
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