2009年 しし座流星群
しし座流星群とは
流星と流星群
流星は、宇宙空間をただよう0.1ミリメートルから数センチメートルの「流星ダスト(ちり)」が、秒速数10キロメートルという猛スピードで地球の大気に突っ込んできたときに発光する現象です。発光する高度は上空100キロメートル前後ですが、これを地上から見ていると、夜空を一瞬で駆け抜けていく星のように見えます。
流星がどの瞬間に現れるか予想するのは不可能ですし、出現する方向や明るさもバラバラです。しかし、1年のうちに何回か、決まった時期に天球上の決まった方向を中心に飛ぶ流星の一群があります。これを流星群と呼び、流星が流れてくるように見える中心点を放射点(あるいは輻射点)といいます。その放射点が「しし座」のγ(ガンマ)星、アルギエバ(たてがみ)のそばにあるのが、しし座流星群、あるいはしし座γ流星群で、毎年11月下旬に活動が極大(出現数がもっとも多い時)を迎えます。
例年の出現数を比べると、しし座流星群はペルセウス座流星群(8月)やふたご座流星群(12月)ほど多くありません。それでも抜群の知名度をほこり、注目を集めるのはなぜでしょう。
理由の1つは、しし座流星群の流星がとても明るいことです。とくに明るい流星を火球と呼びますが、しし座流星群では火球の割合が多いのが特徴的です。また、流星の中には消滅後に経路に沿って淡い痕跡を残すものがあって、これを痕といいます。しばしば痕を残す火球が見られるので、しし座流星群は印象に残りやすいのではないでしょうか。
ダスト・トレイルが引き起こす大出現
そしてなんと言っても、たまに起こる大出現が多くの天文ファンをとりこにしています。しし座流星群はテンペル・タットル彗星が軌道上に帯のように残したダスト(ダスト・トレイル)に地球がぶつかることで引き起こされますが、ダスト・トレイルの中心が地球に近く、トレイルに含まれるダストが多いほど、出現する流星の数も多くなるのです。テンペル・タットル彗星は約33年で軌道を一周するため、彗星が地球軌道を通過した直後の1933年や1965・66年はダスト・トレイルに多くの流星物質が含まれていて「流星雨」や「流星嵐」とまで呼ばれる現象を引き起こしました。
テンペル・タットル彗星は1998年にも地球軌道を通過したので、1998年と1999年に大出現が見られると予想されました。実際、それはほぼ正しかったのですが、そのころには流星群の極大を予測する理論も大きな展開を見せていました。そして1999年の極大時刻と出現数が精度良く計算されただけでなく、2001年と2002年にはさらに大規模な出現が起きると予報されたのです。2001年に日本でも見られた「流星嵐」をご覧になった方も多いことでしょう。
予測のポイントは、彗星が残したダスト・トレイルの動きを何年にもわたって計算することです。これまでは彗星が通った直後かどうかだけで判断していましたが、トレイルの位置を正確に求めることで、時間がたってから地球に流星物質が届くケースも計算できるようのなったのです。