「高知みらい科学館」オープン、県下42年ぶりのプラネタリウム
【2018年10月15日 星ナビ編集部】
レポート:下元繁男さん(高知県立芸西天文学習館)
(「星ナビ」2018年10月号「News Watch」より抜粋)
7月24日、高知市の中心部、日曜市で知られる追手筋ぞいに「高知みらい科学館」が開館した。科学館があるのは、新しく建築された複合施設オーテピアの5階部分にあり、これが高知県で唯一のプラネタリウムである。
日本プラネタリウム協議会がウェブサイトで公開しているデータブック(2010年版)を見ると、日本地図の1か所だけ、プラネタリウムの位置を示す黒い点がなく白抜きされたような部分がある。高知県である。私たち高知県立芸西天文学習館の講師は天体観測会の挨拶で「日本でプラネタリウムがない県は高知だけなんです。でも、本物のきれいな星空があるからプラネタリウムはいらないんです」と言って笑いを誘うのが常であったが、これからはこんな強がりを言わなくてもよくなったのである。
高知県にプラネタリウムができたのは、実は今回が初めてのことではない。最初は1950年(昭和25年)南国高知産業大博覧会に合わせて作られた。制作に携わったのはわずか数人。その中に、まだ彗星捜索を始める前で10代の関勉さんがいた。関さんは7mm厚の金属の球に恒星を投映するための穴を5000個近く開け、一番小さな6等星は1mmのドリルを使ったという。すべて手作りだった。この天文館は話題になったものの、財政難で長くは続けられなかった。その後1965年(昭和40年)には安芸市役所に、1966年(昭和41年)には南国産業科学大博覧会にプラネタリウムが開館したが、いずれも1976年(昭和51年)までに閉館した。以来、じつに42年の長きにわたって高知には常設のプラネタリウムがなかったのである。
高知みらい科学館のプラネタリウムドームの直径は12mで82席ある。五藤光学研究所の光学式投映機「オルフェウス」の第1号機が設置され、800万個の恒星で天の川が表現される。またデジタル映像システムも導入され、全天周映像で宇宙空間や高知市の街から見上げた空なども投映できる。特徴は専任の解説員による生解説だ。解説員が様々なデジタル映像を投映しながらナレーションしたり、光学式投映機で星空を投映しつつ、観客の感嘆の声を感じながら解説する。
また、芸西天文学習館との連携も検討されている。「プラネタリウムは科学館で。本物の星空は天文台で!」というわけである。幸い天文台の講師の何人かは科学館の設立にかかわり、現在も兼務している。いずれは天文台で撮った天体写真や観測結果をプラネタリウムの解説に組み込んだり、科学館で企画・募集したイベントを天文台で開催する日も来るだろう。
「高知県はひとつの大家族やき」―小さな高知県にできた小さな科学館。小さくてもそこを中心に、いろいろな施設が連携すれば、いずれは大きな成果につなげられるはずだ。その動きはいままさに始まったばかり。
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