理論予測に合致、連星中性子星を形成する超新星爆発

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中性子星の連星を形成すると考えられる超新星爆発が、過去の観測データから見つかった。ヘリウム層の存在や明るさ、光度変化などが、理論的な予測とよく合致している。

【2018年10月17日 国立天文台

2017年、連星を成す2つの中性子星の合体現象が、重力波と電磁波によって世界で初めて観測された。中性子星どうしの合体は、金や白金(プラチナ)といった元素を作り出す現象であり、今後同様の現象を観測することで元素合成に関する理解が大きく進むと期待されている。

中性子星は、大質量星が進化の最終段階で超新星爆発を起こした際に作られる超高密度の天体だ。そのような天体同士の連星が形成されるには、2つの大質量星それぞれが超新星爆発を起こす必要がある。しかし、まず重い方の星が先に爆発して中性子星が形成され、それに続いてもう一方の星が通常の超新星爆発を起こすと、連星系を作る物質が一気に失われて力学的に不安定となってしまうため、連星系が壊れ中性子星の連星が形成されない。

このように中性子星同士の連星が作られる条件はとても難しいと考えられており、その形成過程はこれまで明らかになっていなかった。

国立天文台理論研究部の守屋尭さんたちの研究チームは、中性子星の連星系の形成について次のようなシナリオを考えた。後から超新星爆発を起こす星の外層が、先の爆発で作られた中性子星の重力の影響でほとんど剥がれてしまう場合があり、その状態で超新星爆発を起こすと、爆発で放出される物質がきわめて少ないために力学的に不安定にならず、連星系が壊れることがないというものだ。この場合、後から爆発する星は、爆発の直前に希薄なヘリウムの層を周りに形成する可能性があることも指摘した。

守屋さんたちはスーパーコンピューター「アテルイ」などを用いた数値シミュレーションによって、外層がほとんど剥がれた星が起こす超新星爆発がどのような天体として観測されるのかを調べた。すると、通常の超新星爆発に比べて爆発のエネルギーが10分の1程度と小さいこと、超新星爆発後の5日から10日までに最も明るくなることが示された。また、具体的なスペクトルの時間変化などについても予測ができるようになった。

このたび、守屋さんのシミュレーションで予測された天体と非常によく一致する超新星が「パロマー突発天体観測プロジェクト(intermediate Palomar Transient Factory; iPTF)」の観測データから発見された。米・カリフォルニア工科大学のKishalay Deさんたちの研究チームが2014年10月に観測した、ペガスス座の銀河に現れた超新星「iPTF14gqr(SN 2014ft)」だ。

超新星iPTF14gqr
超新星iPTF14gqrの出現前(左)と出現後(右)の画像。破線の丸で囲まれた部分が超新星(提供:SDSS/Caltech)

超新星iPTF14gqrは通常の超新星よりも爆発エネルギーが小さく、爆発時に放出された物質がきわめて少ないことを示していた。また、超新星爆発後に行われた分光観測から、周囲に希薄なヘリウムの層が広がっていることがわかった。これらの観測結果は、シミュレーションで予測された外層が大きく剥がれた超新星の特徴とよく一致している。

さらに、超新星の光度変化についても観測とシミュレーションはよく一致していた。これらのことから超新星iPTF14gqrは、中性子星同士の連星を形成すると考えられる天体を世界で初めてとらえたものだといえる。

光度曲線とスペクトルの比較
(左)シミュレーションで予測された超新星の光度曲線(青色の破線)と、実際に観測された超新星iPTF14gqrの光度曲線(白丸)。超新星爆発後3日程度までは爆発の衝撃波が冷えていくため急激に減光し。5~10日の間には超新星爆発で作られた放射性物質が崩壊する熱によって明るくなる(右)シミュレーションによって予測された外層が剥がれた超新星のスペクトル(白)と、観測された超新星iPTF14gqrのスペクトル(ピンク)。青は、連星が起こす一般的な超新星のスペクトル(提供:De et al. Science 2018を改変)

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