重力レンズの助けなしで発見された最遠の星形成銀河

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アルマ望遠鏡による高感度観測で、ビッグバンから9億7000万年後という初期宇宙に存在した銀河の光がとらえられた。重力レンズの助けを得ることなく観測された天体としては最遠の星形成銀河だ。

【2020年1月7日 アルマ望遠鏡

星の材料となる塵やガスが大量に含まれる星形成銀河では、激しい勢いで恒星が生み出されている。なかには、星形成率が天の川銀河(1年間で太陽3個分ほど)の1000倍にも達する星形成銀河もある。

このような爆発的星形成が進む銀河は、宇宙の初期段階には形成されないものと考えられてきたが、近年の観測により宇宙誕生から10億年に満たない時代にも、こうした銀河が発見されるようになってきた(参照:「ダークマターの大海原に浮かぶ巨大原始銀河」)。とはいえ、その発見は容易ではない。大量の塵によって星の光が隠されてしまうことが理由の一つだ。

米・テキサス大学オースティン校のCaitlin Caseyさんたちの研究チームは、ろくぶんぎ座の方向に位置する「MAMBO-9」と呼ばれる銀河をアルマ望遠鏡で観測した。この銀河は10年前に別の観測で発見されていたものだが、これまで距離が不明だったため、初期宇宙に存在する(遠方にある)かどうかはわかっていなかった。

アルマ望遠鏡による高感度観測の結果、MAMBO-9は宇宙誕生からわずか9億7000万年後ごろの時代に存在する銀河であることが明らかになった。「宇宙の初期段階に存在する塵に富んだ星形成銀河を探すための特別な観測を実施し、この銀河を見つけました」(Caseyさん)。

星形成銀河「MAMBO-9」
星形成銀河「MAMBO-9」の電波画像。合体の途上にある2つの部分で構成されており、将来は天の川銀河の100倍以上の星を持つ超巨大銀河へ進化すると考えられている(提供:ALMA (ESO/NAOJ/NRAO), C.M. Casey et al.; NRAO/AUI/NSF, B. Saxton)

この観測の大きなポイントは、MAMBO-9が重力レンズ効果による増光の助けを得ずに観測された最遠の、塵に富んだ銀河ということだ。

遠方の銀河は、その手前に存在する銀河や銀河団による重力レンズ効果を受けて増光、拡大されることで、発見や観測が容易になる。ただし、重力レンズは天体の像を歪めるため、銀河の詳細を把握するのは難しくなるというデメリットもある。MAMBO-9は重力レンズ効果を受けていないおかげで、その質量測定が容易にできた。

「MAMBO-9のガスと塵の総質量は、天の川銀河の星の合計の10倍もあります。つまり、MAMBO-9のほとんどの星がまだ形成されていないということです」(Caseyさん)。

MAMBO-9を可視光線で見た想像図
MAMBO-9を可視光線で見た想像図。大量の塵が含まれ、ほとんどの星がまだ形成されていない(提供:NRAO/AUI/NSF, B. Saxton)

「塵は通常、死にかけている星の副産物です。星は塵の100倍あると想定しているのですが、MAMBO-9では、ほとんどの星がまだ形成されていません。初期宇宙において、どうしたら塵がこれほど早い時期に形成されるのかを明らかにしたいと考えています」(Caseyさん)。