銀河円盤と同じように回転するハローのガス
【2019年6月25日 ケック天文台】
銀河を取り巻く球状構造であるハローには、薄いながらもガス(ハローガス)が存在する。ハローガスは、銀河がどのように進化してきたのかを知る重要な手がかりになると考えられている。10年ほど前の理論モデルからは、回転する冷たいハローガスの角運動量によって銀河の重力の一部が相殺されることで、銀河円盤へのガスの降着速度が遅くなり、円盤の成長期間が長くなることが予測されていた。
米・カリフォルニア大学サンタバーバラ校のCrystal Martinさんたちの研究チームは、50個の典型的な星形成銀河におけるハローガスの回転の向きと速度を調べる観測・研究を行った。
研究チームでは、米・ハワイのケック天文台で銀河の背後に位置する明るいクエーサーのスペクトルを観測し、その吸収スペクトルから、見えざるハローガスを検出した。さらに、スペクトルに表れるドップラー効果からガス雲の回転の向きと速度を調べ、銀河の円盤の回転と同じ向きにハローガスが回転していること、ガスは銀河円盤に向かって渦を巻きながら落ち込むことを明らかにした。
「もともとは銀河からずっと遠く離れたところに蓄積されていたガスが、何らかの原因で銀河のほうへと動いてくるうちに、現在見られるような銀河円盤と同じ向きに回転するハローガスになった可能性が考えられます。フィギュアスケーターがスピンの時に両腕を体に引き寄せて加速するのと同じようなものです」(Martinさん)。
この研究成果は、これまでの理論の正しさを確認するものとなり、ハローガスの角運動量は円盤へと落ち込むガスの速度を遅くするほど強いものだが、銀河円盤へのガスの供給を完全に止めてしまうほどではないことが示された。「銀河円盤の成長の理解における大きな進展です。銀河は大質量のガスに取り囲まれていて、目に見える銀河の範囲から非常に遠くまで広がっています。それらの物質が銀河円盤にどのように運ばれて、次世代の星形成の材料として供給されているのか、これまではっきりとはわかっていませんでした」(Martinさん)。
研究チームでは今後、銀河円盤へと引っ張り込まれるハローガスの割合を計測し、星形成率とガスが流れ込む割合を比較するという。星形成銀河の進化や、数十億年という時間スケールで銀河円盤がどのように成長を続けるのかに関する理解が進むことが期待される。
〈参照〉
- W. M. Keck Observatory:Cool Halo Gas Caught Spinning Like Galactic Disks
- The Astrophysical Journal:Kinematics of Circumgalactic Gas: Feeding Galaxies and Feedback 論文
〈関連リンク〉
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