ソンブレロ銀河のハローには金属欠乏星がほとんどない

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ハッブル宇宙望遠鏡による観測で、ソンブレロ銀河のハローには低金属星の割合が非常に小さい一方、金属の豊富な星の割合が予想以上に高いことが示された。典型的な渦巻銀河に見られるものとは異なる傾向だ。

【2020年3月2日 NASA

おとめ座のソンブレロ銀河M104は、4600万光年と比較的近距離に位置する明るい銀河で、アマチュア天文家の観望・撮影対象としても研究者の観測対象としても人気の高い天体である。とくに研究対象としては、渦巻銀河と楕円銀河の特徴を兼ね備えたような不思議な構造が注目点の一つだ。

ソンブレロ銀河の明るい部分の周囲には、ハローと呼ばれる淡い領域が球状に広がっている。米・宇宙望遠鏡科学研究所(STScI)のRoger E. Cohenさんたちの研究チームが、ハッブル宇宙望遠鏡(HST)を使ってソンブレロ銀河のハローを観測したところ、金属量(水素とヘリウム以外の元素の量)が低い星の割合がわずかしかなく、反対に金属量の高い星が予想以上に多いことが明らかになった。

「ソンブレロ銀河は一風変わった銀河で、とても興味深い天体です。HSTによる観測から、銀河の進化などに関する多くのことをソンブレロ銀河が教えてくれるという、別の面白い点が示されました」(STScI Paul Goudfrooijさん)。

ソンブレロ銀河
ソンブレロ銀河M104(提供:NASA/Digitized Sky Survey/P. Goudfrooij (STScI)/The Hubble Heritage Team (STScI/AURA))

ハローは天の川銀河をはじめ渦巻銀河に見られる構造で、一般的には金属量が少ない低金属星(金属欠乏星)の割合が高い領域である。金属元素は恒星の内部で起こる核融合反応によって生成され、星の一生の終わりに周囲へ放出される。その物質を取り込んで次世代の星が誕生するので、銀河の円盤部のように星の材料が豊富に存在し星形成のサイクルが活発なところでは星の金属量が増えていく。反対にハローではそのような活動がないため、サイクルが繰り返されず、年老いた金属欠乏星の割合が高くなる。

これがハローの星に関する従来の理解だが、今回の観測研究では、ソンブレロ銀河ではそうなっていないことが示された。

ハローには、年老いた星が数十万個集まっている球状星団という天体も存在する。これらの星団からハローに星が抜け出していけば金属欠乏星の割合が高くなるはずだが、ソンブレロ銀河ではそのような過程があまり起こっていないようだ。

また、金属を多く含む多数の若い星で構成される大質量の銀河同士が衝突合体すれば、ハロー中に金属量の高い星が多く分布しても不思議ではないので、ソンブレロ銀河でもこのような現象が起こったのではないかという可能性も考えられる。ソンブレロ銀河は非常に安定した整った姿をしており、天文学的な時間スケールで最近に破壊的現象が起こったことを示す証拠はまったく見られないが、コンピューターモデルによれば昔に衝突合体が起こった可能性が示されている。

今後はソンブレロ銀河と同程度の距離にある銀河のハロー内の金属量が調べられる予定だ。研究チームでは、次世代宇宙望遠鏡による観測でソンブレロ銀河の予想外の特徴がさらに詳しく調べられることを心待ちにしている。

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