太陽探査機ソーラーオービター、最初の成果を公開
今年2月に打ち上げられヨーロッパ宇宙機関とNASAが協力して運用中の太陽探査機「ソーラーオービター」が、6月15日に初めて近日点(軌道上で太陽に一番近づく点)を通過した。このときソーラーオービターは、地球・太陽間の約半分に相当する約7700万kmまで太陽に接近した。
ソーラーオービターは太陽とその周辺を様々な波長でとらえる6台の望遠鏡を含む10種類の科学機器を搭載している。近日点通過の際、これらの機器の動作確認を兼ねた観測が行われた。過去にソーラーオービターよりも太陽に近づいた探査機は存在するが、いずれも太陽表面の姿をとらえる撮像機器を備えていなかった。つまり今回公開された画像は、史上最も太陽に近寄って撮影された太陽像となる。
初画像に見られた太陽表面の新たな特徴「キャンプファイヤー」
太陽コロナを高解像度で撮影できる「極紫外線撮像器(EUI)」の画像には、これまでに観測されたことのない表面の特徴があちこちに見られた。EUIの主任研究員を務めるDavid Berghmansさんが「キャンプファイヤー」という愛称をつけたこれらの特徴は、太陽フレアの極小版のようなものとみられている。「キャンプファイヤーの規模は太陽フレアの数百万分の1から数十億分の1ほどしかありません。太陽は一見穏やかに見えますが、拡大すると至るところに、こうしたミニチュア版フレアが見つかります」(Berghmansさん)。
キャンプファイヤーが通常のフレアと同じメカニズムで発生しているのかどうかは不明である。ただ、このような極小規模の爆発現象(ナノフレア)が太陽コロナの加熱に寄与しているという仮説は以前から唱えられていた。太陽表面の温度が摂氏約5500度であるのに対して外側に広がる太陽コロナが摂氏100万度以上もの高温であるという現象の物理的メカニズムはわかっていないが、キャンプファイヤーがその解明の手掛かりとなるかもしれない。今後の探査でキャンプファイヤーの温度が正確に計測されれば、性質などがわかってくると期待される。
太陽の磁場に迫る
「偏波測定・日震撮像装置(PHI)」は、太陽表面の磁場を高解像度で観測し、太陽フレアが生まれる場所のように活動が活発で特に磁場の強い領域をモニタリング観測することができる装置だ。「現在の太陽は11年周期の活動サイクルの中でも非常に穏やかな状態にあります。しかし、地球とは異なる角度に位置するソーラーオービターによって、地球から観測できない活動の活発な領域の一つを見ることができました。これは初めてのことで、これまで太陽の裏側の磁場を計測できたことはありませんでした」(PHI主任研究員 Sami Solankiさん)。
黄道光をとらえる
「太陽および太陽圏撮像器(SoloHI)」は、惑星間塵によって反射される太陽光、いわゆる「黄道光」をとらえた。
黄道光は、地上からは日の出前の東天や日没後の西天に見えることがある。太陽に近い位置の黄道光を見るのは太陽が明るすぎるために非常に難しいが、SoloHIは太陽を1兆分の1にまで減光して黄道光を観測しし、黄道光を完璧にとらえた。この結果を受けて研究者たちは、探査機がもっと太陽へ接近したときにも(やはり淡くとらえにくい)太陽風の構造を見ることができると確信しているという。
「初画像は実にエキサイティングですが、探査は始まったばかりです。ソーラーオービターは2年以内にさらに太陽へ接近し、最終的に太陽・地球間のほぼ4分の1に当たる、太陽まで約4200万kmの距離に到達します」(ソーラーオービオター・プロジェクトサイエンティスト Daniel Müllerさん)。
〈参照〉
- ESA:Solar Orbiter's first images reveal `campfires' on the Sun
- NASA:ESA/NASA's Solar Orbiter Returns First Data, Snaps Closest Pictures of the Sun
〈関連リンク〉
- Solar Orbiter
- アストロアーツ 天体写真ギャラリー:太陽
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