太陽とよく似た性質の星でもスーパーフレアが100年に1回起こる
【2025年1月7日 国立天文台/マックスプランク太陽系研究所】
太陽の表面では、爆発現象であるフレアや、フレアに伴ってプラズマの塊が放出されるコロナ質量放出と呼ばれる現象が起こり、その際に放出される高エネルギー粒子は地球周辺の宇宙環境や地上に様々な影響を及ぼす。たとえば昨年5月には大規模な太陽フレアの連続発生により、日本を含めた各地で低緯度オーロラが見られた。
太陽によく似た特徴の恒星は、フレアをはるかに上回る規模の「スーパーフレア」を起こすことがわかっていて、そのエネルギーは通常のフレアの数十倍から1000倍にも達する(参照:「若い恒星のスーパーフレアに伴う物質の噴出を初検出」、「プロキシマケンタウリの巨大フレアを多波長で観測」)。もし太陽がスーパーフレアを起こせば、地上のインフラや人工衛星が甚大なダメージを受ける可能性がある。そのため、太陽がどれほど巨大なフレアを起こし得るのかを明らかにしようと様々な方法で研究が行われている。
独・マックスプランク太陽系研究所のValeriy Vasilyevさんたちの研究チームは、系外惑星探査衛星「ケプラー」の観測データと位置天文衛星「ガイア」による恒星カタログとを組み合わせ、太陽とよく似た恒星のスーパーフレアの発生頻度を調べる研究を行った。ケプラーは恒星の明るさの変動から惑星の存在を調べることが主目的だが、そのデータは短時間で顕著に明るさが変わるスーパーフレアを検出することにも利用できる。「私たちは太陽を何千年も観測することはできませんが、太陽によく似た大量の星の振る舞いをモニター観測すれば、スーパーフレアの発生頻度の推定に役立ちます」(マックスプランク太陽系研究所 Sami Solankiさん)。
研究チームは5万6450個の太陽とよく似た恒星のうち2527個で、合計2889回のスーパーフレアを検出した。そのうち、太陽における過去165年の間に観測された最大級フレアよりも20倍以上大きなスーパーフレアの発生頻度は、1つの星について1000年あたり8.6回と見積もられた。また、温度や自転周期がさらに太陽に近い約6000個の恒星に限っても、238個で合計208回のスーパーフレアが検出された。
この結果から推測すると、スーパーフレアの発生頻度は1つの星で1000年あたり7.7回となる。従来の研究では数千年に1回と考えられていたが、その数十倍も高頻度という結果だ。
では、実際の太陽はどうなのだろうか。過去1万2000年の間に太陽で起こったスーパーフレアに起因すると考えられる現象の頻度は、およそ1500年に1回と推定されている。また、太陽フレアの現代的な観測が始まって以降、太陽でスーパーフレアが起こった確実な記録はなく、今回の研究結果とは大きな開きがある。
太陽をはじめとするスーパーフレアを起こさない「おとなしい」星と、今回の研究で見つかった、太陽とよく似た性質を持ちながらスーパーフレアを起こす星との間には、本質的な違いがあるのかもしれない。さらに研究が進むことで、太陽のスーパーフレアのリスクや地球への影響などがより詳しく推定できるようになるだろう。
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〈参照〉
- 国立天文台ハワイ観測所 岡山分室:太陽とよく似た性質の星でもスーパーフレアが1世紀に1回起こる
- Max Planck Institute for Solar System:Solar Superflares once per Century
- Science:Sun-like stars produce superflares roughly one per century 論文
〈関連リンク〉
- NASA:Kepler and K2 Missions
- ESA:Gaia
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