水星探査機「ベピコロンボ」、最初の金星フライバイ
【2020年10月20日 ヨーロッパ宇宙機関】
2018年10月20日に打ち上げられた「ベピコロンボ」は、JAXAとヨーロッパ宇宙機関(ESA)による国際水星探査計画だ。JAXAが開発した水星磁気圏探査機「みお(MMO)」とESAが開発した水星表面探査機「MPO」が一緒に水星までの道のり航行し、2025年に水星を周回する軌道に入る予定となっている。
太陽の強い重力が働く中で水星に向かって探査機の舵を取るために使われるのが、惑星の引力を使って軌道を調整するフライバイだ。ベピコロンボでは、探査機が水星周回軌道へ入るまでに計9回の惑星フライバイが実施される。その初回として今年の4月10日に地球フライバイが行われ、10月15日に金星フライバイが実施された。今後、金星フライバイがもう1回、さらに6回の水星フライバイが予定されている。
10月15日の金星フライバイでは、探査機は金星の地表まで約1万720kmの距離にまで接近した。フライバイを無事成功させるため、遠く離れた地球の独・ダルムシュタットにあるESAの管制センターでは3か月前から準備が行われていた。だがその作業の大半もまた、新型コロナウイルス対策でリモートワークによって行われたという。
フライバイ直前に金星から約1万4000kmの距離から撮影された画像から作成された動画(明るさとコントラスト強調)。MPOの磁力計のすぐ後ろ、画像右上に金星が現れて視野を横切り、探査機の中利得アンテナに向かって移動している。金星表面のうち、完全に照らされている領域と完全に影になっている領域の境界の変化は、探査機の経路が惑星の昼側から夜側へカーブしていることを示している(提供:ESA/BepiColombo/MTM, CC BY-SA 3.0 IGO)
最接近の前後にはモニタリングカメラが金星の方向を撮影し続けた。また「みお」に搭載されている5つの科学機器のうち3つ、「MPO」に搭載されている12の装置のうち8つが金星フライバイ時に稼働した。さらに、現在金星を周回している唯一の探査機であるJAXAの「あかつき」と、地球周回軌道にある惑星分光観測衛星「ひさき」、地球上の天文台も同時に観測を行い、様々な視点と異なるスケールで金星をとらえた。
金星フライバイ時の各種運用の概要イラスト。「みお」と「MPO」に搭載されている機器とセンサーが稼働し、推進モジュール(MTM)2台のカメラは、金星への最接近の前後2回(イラスト中央の航行ルート上の水色で示された位置)で画像を取得。地上の天文台(画像左下)からの観測に加え、金星探査機「あかつき」(金星左下方)も観測を実施した。画像クリックで表示拡大(提供:ESA)
次の金星フライバイは2021年8月10日に予定されていて、探査機は惑星の上空550km以内を飛行することになっている。その後、2021年10月には初の水星フライバイを実施し、地表までわずか200kmの距離に接近する。
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