ベテルギウスを暗くした塵の姿
【2021年6月21日 ヨーロッパ南天天文台】
オリオン座の1等星ベテルギウスは、2019年10月ごろから急激に暗くなり、2020年はじめには一時期、2等級にまで減光していた(参照:「2等星に陥落!ベテルギウス減光のゆくえ」)。ヨーロッパ南天天文台の超大型望遠鏡VLTはいち早くベテルギウスを撮影し、星の表面が南側を中心に暗くなっている様子をとらえている(参照:「減光とともに形も変わったベテルギウス」)。この時点では、減光の原因としてベテルギウスの表面そのものが暗くなったという説と、塵に覆われたという説が挙げられていた。
仏・パリ天文台/ベルギー・ルーベン・カトリック大学のMiguel Montargèsさんたちの研究チームは2020年の1月と3月にもベテルギウスを撮影し、形状の変化を調べた。同時に、4基のVLTを組み合わせるVLT干渉計(VLTI)でも観測を行い、ベテルギウスの大きさや表面温度を測定している。「私たちは星をただ点として観察するだけでなく、その表面を詳細にとらえ、この現象が起こっている間モニタリングすることができました」(Montargèsさん)。
VLTとVLTIで取得したデータから、研究チームは塵こそが減光の原因だと結論づけた。星の内部や表面は高温なので、どんな物質も蒸発してしまう。そして星の表面から放出されたガスが表面から十分遠ざかると、物質は冷えて塵となる。研究チームが考えるシナリオは、減光に先立って大きなガスの塊がベテルギウスから放出され、その直後に星の表面温度が下がり、冷えたガスが表面からあまり遠くないところで大きな塵の雲となり、これが光を遮ったというものだ。ベテルギウスは明るさなどが変化する脈動型変光星であり、今回の仮説はそのふるまいに沿っているという。
ベテルギウスのように死にゆく星から放出された塵は、巡り巡って惑星や生命の材料になるのではないかと考えられる。また、大質量星が寿命を迎えたときに起こす超新星爆発も、重元素をまき散らす重要な出来事だ。ベテルギウスが大減光したときは、超新星となる前触れではないかという憶測もあった。今ではその見方は否定されているが、ベテルギウスは爆発しなかったとしても注目に値する面白い恒星と言えるだろう。
〈参照〉
- ESO:Mystery of Betelgeuse’s dip in brightness solved
- CfA:Mystery Solved: Dust Cloud Led to Betelgeuse's 'Great Dimming'
- Nature:A dusty veil shading Betelgeuse during its Great Dimming 論文
〈関連リンク〉
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