132億光年彼方の銀河に酸素と塵を検出

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アルマ望遠鏡の観測により、132億光年彼方の銀河「A2744_YD4」で、酸素と塵が放つ電波が検出された。酸素と塵が発見された銀河の最遠方記録を約1億光年更新する成果であり、宇宙で最初の星が誕生していた時代に迫る成果だ。

【2017年3月9日 アルマ望遠鏡

宇宙で最初の星や銀河は、138億年前のビッグバンから数億年後に誕生したと考えられている。ビッグバン直後の宇宙には、水素とヘリウム、ごく微量のリチウムだけが存在しており、星内部の元素合成によって炭素や酸素、鉄などの重い元素が作られていった。

こうした重元素が、宇宙の歴史のいつごろからどのようなペースで銀河に蓄積されてきたのかを調べることで、宇宙最初期の星の誕生史と銀河の進化のようすを理解することが可能となり、ひいては私たちのルーツを探ることにもつながる。

英・ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのNicolas Laporteさんたちの研究チームは、ちょうこくしつ座の銀河「A2744_YD4」をアルマ望遠鏡で観測した。この銀河は銀河団「エイベル2744」の方向にあり、銀河団の重力レンズ効果によって増光されているおかげで銀河の光や電波を詳しく分析するのに適している。

銀河A2744_YD4
ハッブル宇宙望遠鏡で観測された銀河団エイベル2744。画像中左上に銀河A2744_YD4の位置と拡大図を示す。(赤)アルマ望遠鏡によって観測された塵からの電波(提供:ALMA (ESO/NAOJ/NRAO), NASA, ESA, ESO and D. Coe (STScI)/J. Merten (Heidelberg/Bologna))

観測の結果、銀河中の塵と酸素が発する電波が検出された。さらに、酸素が発する電波を詳細に分析し、A2744_YD4までの距離が132億光年であることを突き止めた。ヨーロッパ南天天文台の超大型望遠鏡「VLT」による追加観測でも距離が確認され、この銀河が確かに132億光年先に存在していることがわかった。この距離は、塵や酸素が検出された銀河としては従来の記録を1億光年更新する最遠方記録となる。

観測された塵からの電波をもとに計算すると、A2744_YD4に含まれる塵の総質量が太陽の600万倍、星の総質量が太陽の20億倍となる。さらに、1年間で太陽20個分に相当するガスが星になっていることもわかった。A2744_YD4における星の誕生が天の川銀河と比べておよそ10倍活発であることを示している。

塵は、星の内部で作られた元素が星の死によってばら撒かれる過程で作られる。このため、星の誕生のペース(すなわち、星の死によって塵が作られるペース)と観測された塵の総量とを比較すれば、塵が蓄積するのに必要な時間を求めることができる。観測結果によれば、A2744_YD4ではその時間は約2億年と計算された。つまり、現在から134億年前に活発な星形成活動が始まったということを示している。宇宙全体の歴史から見れば2億年というのはわずかな時間であるため、今回の成果は宇宙で最初の星や銀河の「スイッチが入った」時期に迫る大きな手がかりといえる。

「銀河A2744_YD4は、単にアルマ望遠鏡で観測された最も遠い天体、ということにとどまりません。非常に大量の塵を検出できたことは、星の死によってまきちらされた塵による「汚染」がこの銀河の中ではすでに進んでいることを示しているのです。同様の観測を進めることで、宇宙初期の星の誕生をたどり、銀河における重元素増加の開始時期をさらに昔までさかのぼることができるでしょう」(Laporteさん)。