自ら形を変える110億光年彼方の銀河

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すばる、ハッブル、アルマの3つの望遠鏡による観測研究から、110億光年彼方の銀河が円盤状の形をしており、その中心で銀河の形を変えるほどの激しい星形成が起こっている様子が明らかになった。銀河の進化過程が、定説となっている衝突合体以外にも存在したことを示す重要な証拠となる。

【2017年9月15日 アルマ望遠鏡

銀河の姿形はそれぞれ異なっており、円盤が目立つ「円盤型」(例:「渦巻銀河」や「棒渦巻銀河)と、中央部の星の集合体が目立つ「楕円型」(例:「楕円銀河」や「レンズ状銀河」)の2つに大きく分けられる。現在の宇宙にある巨大銀河の多くは「楕円型」に分類されるが、古い時代の銀河を観測すると大部分が「円盤型」であるため、円盤状の形をして回転していたと考えられる。

およそ100年前、アメリカの天文学者エドウィン・ハッブルが天の川銀河の外側にも別の銀河が存在していることを発見してから、銀河の形態の起源を解明するための研究が続けられてきた。40年ほど前には、「円盤型の銀河同士が衝突合体し、楕円型の銀河に進化する」という「銀河の衝突合体説」が提唱され、現在の定説となっている。その一方で、現存する全ての楕円型銀河が衝突合体によって形成したのかという点については疑問とされてきた。

銀河の星は100億年から110億年前に生まれたものが多く、銀河の進化の歴史上最も重要な時代であるとされている。この時代の銀河の様子を探るため、マックスプランク地球外物理学研究所・国立天文台の但木謙一さんと東北大学の児玉忠恭さんを中心とする国際チームは、110億光年彼方にある銀河を調査した。

アルマ望遠鏡とハッブル宇宙望遠鏡でとらえた110億光年彼方の銀河
アルマ望遠鏡では、銀河の中心部に活発に星が作られている場所が特定された(左)。ハッブル宇宙望遠鏡の可視光線画像(中央)と近赤外線画像(右)では、それぞれ巨大な星団と広がった銀河円盤が見えている(提供:ALMA (ESO/NAOJ/NRAO), NASA/ESA Hubble Space Telescope, Tadaki et al.)

研究では、すばる望遠鏡で発見した25個の銀河をさらにハッブル宇宙望遠鏡とアルマ望遠鏡で観測し、これらの銀河の内部構造を複数の観点から描き出した。

銀河を構成する星々が放つ近赤外線をとらえるハッブル望遠鏡の観測から、110億光年彼方の銀河は大きな円盤状の形をしており、110億年前の時点ではまだ楕円形の銀河には進化していなかったことが明らかになった。星の材料である塵や分子ガスが放つ電波をとらえるアルマ望遠鏡の観測では、これらの銀河の中心で新たな星が爆発的に生まれている様子がわかった。

この銀河中心で起こっている星形成活動は天の川銀河の約40倍の規模に相当すると推定され、その活動は銀河の形を変えるほど激しいものである。つまり、銀河の合体によらず、激しい星形成活動によって円盤型から楕円型へと自らその形を変えることができたといえる。

110億光年彼方の銀河の想像図
アルマ望遠鏡とハッブル宇宙望遠鏡で観測した110億光年彼方の銀河の想像図。円盤を持つ銀河の中心部で、塵におおわれた中で活発に星が作られている。円盤部には、3つの巨大星団(ハッブル宇宙望遠鏡の可視光線画像で見えている星団に相当)が見えている(提供:国立天文台)

また超大型望遠鏡VLTによって、観測対象となった銀河が大規模な合体をする兆候が見られないことも確認された。

銀河が合体している最中ではない回転円盤を持つ銀河で、銀河の形を変えるほどの激しい星形成活動を発見した今回の研究は、従来の定説である「銀河の衝突合体説」に加え、衝突合体をしない別の進化経路があったことを示す決定的な証拠となる。古代の銀河がいつ、どのようにしてその形を変え、今日に至ったのか説明できたとき、銀河の進化史を解明したといえるだろう。

円盤型の銀河から楕円型の銀河へと進化する道筋の模式図
従来は2つの円盤型銀河が衝突合体して楕円型銀河へと進化する(上)と考えられていたが、今回の観測で円盤型銀河の中心部で激しい星形成が起こることによって楕円型へと進化する新たな道筋(下)が明らかとなった(提供:NASA, ESA, the Hubble Heritage Team (STScI/AURA)-ESA/Hubble Collaboration, A. Evan, K. Noll, and J. Westphal, NAOJ)

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