天の川銀河はどんどん大きくなっている?
【2018年4月6日 EWASS and NAM 2018】
天の川銀河は、数千億個にも及ぶ恒星と大量のガスや塵からなる、直径約10万光年の円盤状の銀河である。銀河は、その形状から渦巻銀河や楕円銀河などに分類されるが、天の川銀河は中心部分に棒状の構造を持つ、棒渦巻銀河の一つだ。
天の川銀河を構成する星々の年齢は様々であり、大質量で高温の青い星のように明るく輝きながら数百万年で一生を終える若いものもあれば、質量が小さい星のように赤く暗いものの途方もなく寿命が長い年老いたものもある。このうち、新しく生み出された若い星々が見られる星形成領域は銀河の円盤部の外縁部分にも存在しており、こうした場所で星が誕生することによって銀河は少しずつ大きくなっていくことが銀河形成のモデルから予測されている。
私たちは天の川銀河の中にいるので、銀河が大きくなっている様子を外から見ることは不可能だ。そこで、スペイン・カナリア天体物理研究所のCristina Martinez-Lombillaさんたちの研究チームは、天の川銀河に似た他の渦巻銀河を観測して、銀河が本当に大きくなっているかどうかを調べた。
Martinez-Lombillaさんたちはスローン・デジタル・スカイ・サーベイで取得された可視光線観測データと、NASAの紫外線天文衛星「GALEX」による近紫外線観測データ、赤外線天文衛星「スピッツァー」による近赤外線観測データを用いて、渦巻銀河の円盤の端に存在する星の動きや色を調べた。その結果をもとにした計算から、天の川銀河のような銀河は1秒に約500mずつ大きくなっているという値が示された。
「天の川銀河はすでにじゅうぶん大きな銀河ですが、新しい星が外縁部に誕生するにつれて、少なくとも目に見える部分が今後ゆっくりと大きくなっていくことが私たちの研究から示されました。ただし、すぐに大きくなるわけではありません。もし30億年後の天の川銀河を見ることができれば、その姿は、少なくとも現在より5%ほど大きくなっていることでしょう」(Martinez-Lombillaさん)。
なお、天の川銀河は、お隣のアンドロメダ座大銀河と40億年以内に衝突すると予測されており、双方の形は合体で大きく変化するとみられているため、天の川銀河がゆっくりと大きくなっていることは、遠い未来においては何の意味も持たないかもしれない。
〈参照〉
- European Week of Astronomy and Space Science press release:Is the Milky Way getting bigger?
- MNRAS:Discovery of disc truncations above the galaxies’ mid-plane in Milky Way-like galaxies 論文
〈関連リンク〉
- SDSS
- Galaxy Evolution Explorer (GALEX)
- Spitzer Space Telescope
- アストロアーツ 投稿画像ギャラリー:NGC 4565
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