天の川銀河の衛星銀河は理論予測の倍以上存在か

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すばる望遠鏡の観測データから、天の川銀河の衛星銀河が新たに2個見つかった。これまでに発見されたものも合わせると、天の川銀河の周りには理論予測の倍以上の衛星銀河が存在する可能性がある。

【2024年7月4日 すばる望遠鏡

天の川銀河の周りには、1000個を超えるダークマターの塊と、それに対応する小さな銀河である衛星銀河(矮小銀河)が多数存在すると予想されている。しかし、実際にこれまでに見つかった衛星銀河は数十個しかない。この食い違いの原因として、ダークマターの正体が標準理論とは異なるもので塊の数がもっと少ない可能性や、ダークマターの塊の中でガスから星が生まれる過程に未知の機構がある可能性などが考えられ、解明に向けて研究が進められている。

あるいは、まだ発見されていない暗く小さな衛星銀河が、天の川銀河から離れたところに多く存在しているという可能性も考えられる。国立天文台の本間大輔さんたちの研究チームは、すばる望遠鏡の超広視野主焦点カメラ「ハイパー・シュプリーム・カム(HSC)」を用いた大規模サーベイ「すばる戦略枠プログラム(HSC-SSP)」のデータから矮小銀河探しを行っていて、これまでにおとめ座、くじら座、うしかい座の方向に矮小銀河(Virgo I、Cetus III、Bootes IV)を見つけてきた。

今回、本間さんたちはHSC-SSPの最新データを解析し、おとめ座とろくぶんぎ座の方向に2個の矮小銀河(おとめ座III(Virgo III)、ろくぶんぎ座II(Sextans II))を新発見した。両銀河は、太陽系から30万光年以上離れた距離に位置している。

矮小銀河おとめ座III
(左)矮小銀河「おとめ座III」の位置。(右)おとめ座IIIを構成する星々(拡大表示した画像に見られる小さな白丸で囲まれた天体)。黄色い破線内に銀河のメンバー星が集中している。画像クリックで表示拡大(提供:国立天文台/東北大学)

今回の発見を含めると、HSC-SSPの天域(全天の約3%に相当)には計9個の矮小銀河が見つかったことになる。この数は、最新の理論で予想される衛星銀河の個数(220個程度)をかなり上回るものであり、天の川銀河に少なくとも500個の衛星銀河が存在することを示唆する結果になるという。衛星銀河が数十個しか見つかっていないという問題は解決しそうな一方で、多すぎるという問題が新たに浮上することになり、星や銀河の形成に関わる物理過程を再検討する必要がありそうだ。

同時に、より広い天域でさらに暗い矮小銀河まで探査範囲を広げて、衛星銀河の個数の統計精度を上げていく必要もある。今後の観測で多くの新衛星銀河が発見され、問題解決の手がかりが得られることが期待される。

天の川銀河の衛星銀河の3次元地図
天の川銀河の周囲にある衛星銀河の3次元地図。(青四角)大マゼラン雲(LMC)と小マゼラン雲(SMC)、(赤丸)他の衛星銀河、(矢印)今回発見されたおとめ座III(Virgo III)とろくぶんぎ座II(Sextans II)。画像クリックで表示拡大

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