土星の環の起源は近くを通ったカイパーベルト天体

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土星の環の起源に関する新たなモデルが提唱された。約40億年前に大きめのカイパーベルト天体が土星の近くを通過した際に破壊され、その破片から環が形成されたようだ。

【2016年10月18日 神戸大学

土星の環の存在は、天体望遠鏡が発明された17世紀に発見された。現在では探査機などの観測により、木星以遠の4つの巨大惑星すべてに環があることが知られている。しかしその起源や、惑星ごとに異なる環の多様性の原因はこれまで説明できていなかった。

土星と天王星
(左)探査機カッシーニによる土星、(右)ハッブル宇宙望遠鏡による天王星(提供:土星:NASA/JPL/Space Science Institute/天王星:NASA/JPL/STScI)

神戸大学の兵頭龍樹さんたちの研究チームは土星の環の起源を解明するため、約40億年前に太陽系内で起こった“後期重爆撃期”に注目した。この時期には海王星以遠に、惑星に成長しきれなかった小天体が現在よりも多数存在し、巨大惑星との重力相互作用によって小天体の軌道が大きく乱され、太陽系全体を飛び交って形成後の惑星にも多数衝突したと考えられている。

太陽系外縁に多数存在した冥王星サイズのカイパーベルト天体が、後期重爆撃期に巨大惑星の潮汐力で破壊されるほど惑星の近くを通過する確率を見積もったところ、土星、天王星、海王星では少なくとも数回の接近通過が起こりうることがわかった。

次に、こうした大きな天体が巨大惑星の近くを通過する際に破壊される過程をコンピュータ・シミュレーションによって調べたところ、多くの場合に、破壊された天体の初期質量の0.1~10%程度の破片が巨大惑星の周りに捕獲されるという結果が得られた。破片の総質量は、現在見られる環の質量を説明するのに十分な量だ。

さらに破片の長期的な変化を追ったところ、捕獲された直後には数kmあった破片の大きさが、破片同士による衝突を繰り返して粉々になることがわかった。破片の軌道が円軌道に近づくこともわかり、破片の大きさと軌道の両面において、現在観測される環が形成されることが確かめられた。

環の形成過程の概念図
環の形成過程の概念図。(点線)巨大惑星の重力が強く働き潮汐破壊が起こる臨界距離。(a) カイパーベルト天体が巨大惑星に近接遭遇する際、巨大惑星の潮汐力によって破壊される。(b) 潮汐破壊によって破片の一部が巨大惑星の周りに捕獲される。(c) 破片同士の衝突によって捕獲された破片は破砕され、軌道も徐々に円軌道に近づき、現在見られる環が形成される(提供:Hyodo, Charnoz, Ohtsuki, Genda 2016, Icarusの図を一部改変)

このモデルは、土星と天王星や海王星の環の組成の違いも説明できる。土星の環は95%以上が氷でできており、天王星や海王星の環には岩石成分も多く含まれていると考えられている。この違いは、環の起源となる天体が接近通過できる距離が惑星の密度によって異なり、結果として天体の破壊具合(氷成分までか、中心の岩石までか)が変わることが原因だという。

この研究結果から、巨大惑星の環は太陽系の惑星形成過程において自然に形成された副産物であることが示された。

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