太陽のあちこちに現れる謎の超音速現象

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太陽観測ロケット「CLASP」による詳細な観測から、わずかに明るい構造が毎秒150km~350kmという超音速で伝播するという現象が太陽の彩層のあちこちで発見された。

【2016年11月24日 国立天文台 ひので科学プロジェクト

太陽観測ロケット「CLASP(Chromospheric Lyman-Alpha SpectroPolarimeter)」は、ライマンα線(121.567nm)の偏光分光を観測して、太陽表面とコロナをつなぐ彩層・遷移層の磁場を計測することを主目的とした実験機だ。2015年9月に打ち上げられ、宇宙空間から大気圏内に落ちてくる約5分の間に太陽の縁付近の観測を行った。

国立天文台の久保雅仁さんたちの研究チームは、CLASPの撮像装置(メインの偏光分光観測装置を補助する装置)による観測データを用いて、太陽の高速・高頻度現象の発見に挑戦した。この装置は0.6秒に1枚の彩層画像を取得するという高い時間分解能と、微弱な光の変動でも検出できる高い感度を兼ね備えたものだ。

動画を見ると、5分間の観測ではほとんど彩層が変化していないように見える。しかし、ゆっくりと変化する成分を元の画像から差し引き、30秒以下の変化を強調すると、常に変動し続けている太陽の姿が浮かび上がってきた。

(左)CLASPで撮影した太陽のライマンα線画像の動画。(右)30秒以下の時間スケールの明るさの変動を強調した動画。左右の動画の観測領域は同じ(提供:国立天文台、JAXA、NASA/MSFC、以下同)

さらに、1本の明るい筋構造に着目したところ、明るさの変動が繰り返し筋構造に沿って移動していくことがわかった。明るさの変動が伝わる速度は毎秒300km程度で、少なくとも同じ領域で4回同じ現象が起こっている。

上記動画の一部を拡大したもの。(水色矢印)この領域で4回発生している高速伝播現象

こうした明るさの変動が繰り返し高速で伝播する現象は、わずか5分間の観測期間で、非常に明瞭な物だけでも20か所で起こっている。比較的強い磁場が集中している領域だけでなく、その外の領域でも観測され、太陽彩層ではいつでもどこでも起こっている現象であることが明らかになった。明るさの変動が伝わる速度は、毎秒150km~350km程度で、太陽彩層の音速(毎秒約20km)と比べ10倍近く速い。また、磁場が集中する領域から明るさの変動が伝わる傾向にあることもわかった。

繰り返し高速伝播現象が起こっている領域
繰り返し高速伝播現象が起こっている領域(緑色の四角で囲まれた20か所)

太陽観測衛星「ひので」や先進的な地上観測装置によって、超音速の現象が彩層で次々と発見されてきた。しかし、今回の成果で明らかになった現象は今まで観測されている彩層の超音速現象と比べても速度が大きく、非常に短い時間で起こる現象という特徴を持つ。その現象が何であるかはまだわかっていないが、磁場に関係する波動現象ではないかと推測されている。

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