宇宙から解明された地球の岩石圏の磁場
【2017年3月24日 ヨーロッパ宇宙機関】
地球を取り巻く磁場は宇宙線や高エネルギー粒子から私たちを守ってくれている、繭のような存在だ。その磁場のほとんどは、地下3000km以上の深さのところで溶けた鉄が動くことによって発生している。残りの6%のうち一部は、地球周囲の宇宙空間における電流によるもので、さらに加えて、地殻と上層マントルからなる岩石圏(リソスフェア)の上層に存在する磁化した岩石によるものが含まれる。
岩石圏の磁場は非常に弱く、宇宙からの検出は難しいものだが、ヨーロッパ宇宙機関の3機編成の地磁気観測衛星「Swarm」がその磁場のシグナルの分布図を描き出した。3年にわたるデータ収集により、宇宙から観測された最も解像度の高い分布図となっている。
「Swarmのデータと別の衛星の観測、新たなモデルにより、地殻磁化の微弱な磁場のシグナルを抽出することができました」(デンマーク工科大学 Nils Olsenさん)。
分布図では、中央アフリカ共和国の都市バンギを中心とした、かなり鋭く強い異常が見られる。異常の原因はまだわかっていないが、5億4000万年以上前に起こった隕石の衝突の結果かもしれないと推測されている。
〈参照〉
- ヨーロッパ宇宙機関: Unravelling Earth's magnetic field
〈関連リンク〉
- ヨーロッパ宇宙機関 Earth Online: https://earth.esa.int/
関連記事
- 2024/09/20 4億6600万年前、地球には環があったかもしれない
- 2024/04/03 天の川銀河中心のブラックホールの縁に渦巻く磁場構造を発見
- 2024/01/19 天の川銀河の折り重なる磁場を初めて測定
- 2023/06/29 太陽の熱対流が磁場をねじり、フレアを起こす
- 2023/06/12 プラズマの放射冷却で探るM87ジェットの磁場強度
- 2023/05/26 木星大気の長期変動は「ねじれ振動」に起因する可能性
- 2023/05/11 形成直後の地球表層は原始生命に苛酷な環境だった
- 2023/05/10 太陽フレアが生命の材料を作った可能性
- 2023/01/30 磁場が支えていた大質量星への物質供給
- 2023/01/06 ほ座パルサー星雲のX線偏光は、かに星雲の2倍以上
- 2022/09/22 ビザンツ帝国の日食記録から地球の自転速度変化をたどる
- 2022/08/29 宇宙最初の星は「ひとりっ子」で誕生する
- 2022/03/24 太陽型星では大気の加熱メカニズムは普遍的
- 2022/02/09 液体金属の分離が、火星磁場の運命を決めた
- 2021/09/22 「富岳」、太陽の自転周期を再現することに成功
- 2021/08/31 鉄が多い岩石惑星の磁場は長持ちしない
- 2021/08/06 磁場と重力、大質量星の誕生に深く関わるのはどちらか
- 2021/07/29 磁場で超高速回転する原始星ジェット
- 2021/07/16 木星の明滅するX線オーロラのメカニズム
- 2021/07/01 地球コア形成時に硫黄が果たした役割を解明