ブラックホールの「事象の地平線」の存在をサーベイ観測で検証

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ブラックホールの境界「事象の地平線」の存在は広く信じられているものの、その実在性は証明されていない。「存在しない場合」に見られるはずの現象を調べることで、反対に実在性を示すという研究結果が発表された。

【2017年6月6日 RAS News&Press

物質がブラックホールにある程度より近づくと、ブラックホールの強力な重力のためそこから逃げ出すことはできない。この境界は「事象の地平線」と呼ばれており、理論的に存在が予測されている。多くの銀河の中心に存在すると考えられている、太陽の数百万倍から数十億倍もの質量を持つ超大質量ブラックホールの場合も、星が事象の地平線を越えてしまうと消えてしまうはずだ。

事象の地平線を横切る星の想像図
ブラックホールの事象の地平線を横切る星の想像図(提供:Mark A. Garlick/CfA)

しかし、銀河の中心にはブラックホールではなく巨大な質量を持つ「何か」があるという説も考えられている。その場合、天体の周りには事象の地平線の代わりに硬い表面が存在するはずであり、そこに星がぶつかれば、吸い込まれて消えるのではなく破壊されてしまうはずである。

米・テキサス大学オースティン校のPawan Kumarさんたちの研究チームは、そうした破壊現象が起こっているかどうかを観測的に調べ、そこから逆説的に事象の地平線の実在性を示すことを考えた。

Kumarさんたちはまず、銀河中心に事象の地平線が存在せず硬い表面があり(つまりブラックホールではない大質量天体があり)、そこに星がぶつかった場合にどんな現象が観測されるかを調べた。すると、天体が星のガスで包み込まれ、数か月から数年単位で輝くだろうという結論に至った。

次に、こうした衝突がどのくらいの頻度で起こるかを見積もり、その見積もりをもとに、観測されると期待される現象数を計算した。そしてその結果を、米・ハワイで行われているパンスターズ望遠鏡によるサーベイ観測の結果と比較した。

「硬い表面を持つ大質量天体の理論が正しい場合、サーベイ観測の結果中に10回以上、星のガスに包み込まれたことによる一時的な増光が検出されるはずでした」(米・テキサス州オースティン校 Wenbin Luさん)。

しかし研究チームは、たったの一つも一時的増光を見つけることはなかった。

「今回の研究が示唆したのは、一部の、いやおそらくすべてのブラックホールに事象の地平線が存在しており、そこを越えた物質は観測可能な宇宙から消えてしまうということです。アインシュタインの一般相対性理論の正しさを証明する結果です」(米・ハーバード・スミソニアン天体物理センター Ramesh Narayanさん)。

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