衛星「エンケラドス」周囲に大量のメタノール
【2017年7月7日 RAS】
土星の衛星「エンケラドス」の南極には大きなひび割れが存在し、そこから蒸気や氷の結晶が噴出している。蒸気や氷の供給源は地下に存在する海だと考えられている。また、噴出した氷の粒や塵によって、土星の環のうち外から2番目にあるE環が形成されている。
土星探査機「カッシーニ」はエンケラドスの噴出の中を飛行し、メタノールをはじめとする有機分子を検出してきた。そして、最近の研究から、地球の海とエンケラドスの噴出には同程度の量のメタノールが存在することが明らかになった。
英・カーディフ大学のJane Greavesさんと英・オープン大学のHelen Fraserさんは、スペインのIRAM 30mミリ波望遠鏡を使った地上からの観測により、エンケラドスの周囲にメタノールの存在を示す成果を得た。地上からメタノールが検出されたのは初めてのことだ。
予想外に大量のメタノールが検出されたのは、エンケラドスから噴出したガスが土星の磁場によって閉じ込められたためか、あるいはガスがE環に到達するほど大きく広がったためだと考えられている。
「観測というものは、そう単純なものではありません。観測結果を解釈するためには、カッシーニが得たエンケラドスの環境に関する多くの情報が必要でした。今回の結果が示しているのは、生命存在の証拠につながるような分子の存在を報告する際には注意が必要だということです」(英・インペリアル・カレッジ・ロンドン Dave Clementsさん)。
「近年、氷で覆われた衛星に、液体の水や生命を作るもととなる材料を持つ地下海が存在する可能性が示唆され、こうした衛星には生命を育むのに適した環境があるかもしれないと考えられるようになっています。しかし、エンケラドスの場合、噴出した物質が宇宙空間へ飛び出した後に起こる化学変化によってメタノールが形成されることが私たちの研究から示されています。つまり、検出されたメタノールは、エンケラドスにおける生命の存在を示すものではなさそうです」(カ―ディフ大学 Emily Drabek-Maunderさん)。
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