海王星の赤道付近に地球サイズの嵐
【2017年8月9日 Keck Observatory】
米・ハワイのケック天文台での観測で、海王星の赤道付近に巨大な嵐がとらえられた。大きさは約9000kmで海王星の半径の3分の1にも達し、東西と南北の両方向で30度以上にわたっている。また、嵐の雲が6月26日から7月2日の間でとても明るくなる様子も観測された。
当初、この雲は1994年にハッブル宇宙望遠鏡が北半球にとらえた複数の雲の集まりと同じものであると思われたが、位置が異なっているので別物のようだ。「通常この領域はとても穏やかで、明るい雲が見られるのは中緯度域だけなので、低緯度に現れた明るい嵐に本当に驚いています。赤道に居座る巨大な雲の姿は壮観です」(米・カリフォルニア大学バークレー校 Ned Molterさん)。
巨大な雲を生み出しているのは、海王星の大気の奥深くに潜む大きな高圧の暗い渦かもしれない。渦から上昇したガスが冷えて凝縮し、メタンの雲ができると考えられている。海王星の風向きは他の惑星と同様に緯度によって大きく異なるので、大きく明るい雲がばらばらにならず広い緯度にわたって存在しているのであれば、それらを一つにまとめる何かがあるはずだ。
あるいは、渦と関係がないとすればその正体は、2010年に土星に発見された巨大な嵐のように時おり他の惑星に見られる巨大な対流雲かもしれない。「海王星の大気内で非常に劇的な変化が起こることを示しています。数十年ごとに起こる季節的な気象現象なのかもしれません」(カリフォルニア大学バークレー校 Imke de Paterさん)。
海王星の大気に関する理解を深めることは、巨大氷惑星で起こる循環の解明につながる。また、海王星サイズの系外惑星が多数発見されているが、その大気についてはまだよくわからないため、海王星大気の研究の重要性は高い。MolterさんとDe Paterさんは今後も観測データの分析を続け、同時にこの秋にも観測を行って新たなデータや時間経過に伴う変化を調べる予定だ。
関連記事
- 2024/12/02 2024年12月9日 海王星食
- 2024/09/12 2024年9月21日 海王星がうお座で衝
- 2024/04/19 2024年4月下旬 火星と海王星が大接近
- 2024/02/29 天王星と海王星に新衛星発見
- 2023/09/12 2023年9月20日 海王星がうお座で衝
- 2023/02/08 2023年2月中旬 金星と海王星が大接近
- 2022/12/16 2022年12月下旬 惑星パレード
- 2022/09/29 JWST、海王星の環や衛星を撮影
- 2022/09/29 2022年10月6日 衛星トリトンによる12等星の食
- 2022/09/09 2022年9月17日 海王星がみずがめ座で衝
- 2022/06/17 2022年6月下旬 明け方の空に全惑星が見える
- 2022/06/07 なぜ海王星は天王星より青いのか
- 2022/05/11 2022年5月中旬 火星と海王星が大接近
- 2022/04/14 過去20年の海王星の温度に予想外の変化
- 2021/09/08 2021年9月15日 海王星がみずがめ座で衝
- 2020/10/28 シアン化水素の観測で調べる海王星の大気循環
- 2020/09/04 2020年9月12日 海王星がみずがめ座で衝
- 2020/07/17 2020年7月下旬 明け方の空に全惑星が見える
- 2020/06/10 2020年6月中旬 火星と海王星が大接近
- 2019/09/04 2019年9月11日 海王星がみずがめ座で衝