4例目の重力波検出

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アメリカの2台のレーザー干渉計型重力波検出器「LIGO」とヨーロッパの重力波検出器「Virgo」が、観測史上4例目となる重力波を検出した。3つの検出器がほぼ同時に重力波を検出したのは今回が初めてのことだ。

【2017年9月28日 LSCLIGO CaltechVirgo

アメリカ国内の2か所に設置されているレーザー干渉計型重力波検出器「Advanced LIGO」と、イタリアに設置されている欧州重力波観測所の重力波検出器「Advanced Virgo」が今年8月14日19時30分(日本時間)、重力波をほぼ同時に検出した。データの解析から、太陽の約31倍と25倍の質量を持つブラックホールの連星が地球から約18億光年彼方で合体し、その瞬間に太陽3個分の質量がエネルギーに変換されて重力波として放出されたものとわかった。

Advanced LIGOとAdvanced Virgoが検出した重力波を発生させたブラックホール同士の合体の数値シミュレーション動画(提供:Numerical Simulation: S. Ossokine, A. Buonanno (Max Planck Institute for Gravitational Physics), Simulating eXtreme Spacetimes project; Scientific Visualisation: T. Dietrich (Max Planck Institute for Gravitational Physics), R. Haas (NCSA))

重力波の検出はこれで4例目で、すべてブラックホール同士の合体によって生じたものだ。また、2011年に観測を終了した「Virgo」の後継機としてこの8月1日から本格観測を開始した「Advanced Virgo」にとっては初の重力波検出となった。「公式なデータ取得の開始からたった2週間しか経っていないAdvanced Virgoで、初の重力波信号を目にできたのは実に素晴らしいことです。機器の能力向上を目指した過去6年間の労力が大きく報われました」(オランダ・アムステルダム自由大学 Jo van den Brandさん)。

3台の重力波検出器による世界的規模のネットワークによって、従来の10倍以上の精度で重力波の発生範囲を絞ることができたり、重力波の偏光がとらえられたりするなど、今回のイベントは重力波研究の新たな時代の扉を開くものとなった。「Advanced VirgoとAdvanced LIGOとの協力を可能にしたネットワークによる観測の始まりです。次回の稼働は来年の秋に予定されています。重力波が毎週のように、いやそれ以上の頻度で検出されることを期待しています」(米・マサチューセッツ工科大学 David Shoemakerさん)。

重力波「GW170814」の推定発生位置
重力波「GW170814」の推定発生位置(=ブラックホール同士の合体が起こったと推測される位置)。エリダヌス座の方向に当たる。LIGOだけでは青いエリア内のどこかとしかわからないが、Virgoの検出と組み合わせることで黄色いエリア内まで範囲が絞られた(提供:CDS/P/Mellinger)

これまでに検出された重力波の位置
これまでに検出された重力波の推定発生位置を示した図(LVT151012は候補現象)。これまでの3回に比べて今回のGW170814の推定範囲が圧倒的に狭いことがわかる(提供:LIGO/Virgo/Caltech/MIT/Leo Singer (Milky Way image: Axel Mellinger)

日本でも岐阜県に重力波検出器「KAGRA」を設置中で、近い将来LIGOやVirgoと共に重力波観測の世界的ネットワークに加わる予定だ。中性子星同士の合体による重力波の検出や電磁波による重力波発生源の同定などを含め、重力波天文学の発展が期待される。

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