太陽の30倍重い若い星

このエントリーをはてなブックマークに追加
太陽の30倍以上もの質量を持つ若い星が見つかった。こうした星は短命なため研究が難しく、大質量星の形成に関する貴重な情報が得られそうだ。

【2016年8月24日 RAS

英・ケンブリッジ大学のJohn D. Ileeさんと英・セント・アンドルーズ大学のDuncan H. Forganさんたちの研究チームは、いて座の方向約1万1000光年彼方の星形成領域に、太陽の30倍以上の質量を持つ若い星を発見した。この星は周囲の分子雲から物質を取り込んでさらに成長を続けており、一人前の星になるころには質量がもっと増えているかもしれない。

天の川銀河の若い大質量星を研究するのは、質量の小さな星に比べるとひじょうに難しい。なぜなら、大質量星の一生はとても短く、1000億個もの星の中では珍しい存在だからだ。「太陽のような平均的な星は数百万年かけて形成されますが、大質量星は10万年程度で形成されます。また、大質量星は燃料をとても早く使い果たしてしまいます。つまり寿命が全体として短いのです」(Ileeさん)。

研究チームでは米・ハワイのサブミリ波干渉計(SMA)と米・ニューメキシコ州のカール・ジャンスキー超大型干渉電波望遠鏡群(VLA)を用いて、星の生まれ故郷であるガスや塵の雲を見通して観測を行い、星の近くにある冷たい塵からの放射量を計測したり、ガス中の異なる分子の特徴をとらえたりした。こうした観測から、星の周囲に、内側のほうが外側より短い周期で回転する(ケプラー回転する)円盤が存在することを確かめた。

若い大質量星の周囲を取り囲む円盤と超高速ガス流の想像図
若い大質量星の周囲を取り囲む円盤と双極方向に噴き出す超高速ガス流の想像図(提供:A. Smith (Institute of Astronomy, Cambridge))

「太陽系も、内惑星のほうが外惑星より速く公転しています。若い大質量星の周りにも同様の円盤が見つかったことは、太陽のような星と大質量星が同様のプロセスで形成されることを示唆しています。とてもワクワクする結果です」(Ileeさん)。