赤色巨星の巨大粒状斑を直接撮影

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ヨーロッパ南天天文台のVLT干渉計により、赤色巨星「つる座π1星」の表面に存在する粒状斑がとらえられた。太陽以外の粒状斑の直接撮影は初めてのことで、一つ一つの大きさは差し渡し約1億2000万kmもある。

【2017年12月26日 ヨーロッパ南天天文台

約530光年の距離に位置する6等星の「つる座π(パイ)1星」は、質量は太陽の1.5倍程度ながら直径が太陽の350倍もある低温の赤色巨星である。赤色巨星は恒星が主系列星を終えた後の段階にあたる天体で、太陽もあと50億年ほどすると同様になると考えられている。赤色巨星の大きさは主系列星のときの数百倍にも達するほど膨らむが、その表面が詳細に観測された例はほとんどない。

ヨーロッパ南天天文台のClaudia Paladiniさんたちの研究チームは同天文台の超大型望遠鏡の干渉計(VLTI)に搭載されている撮像装置PIONIER(Precision Integrated-Optics Near-infrared Imaging ExpeRiment)により、つる座π1星を過去にないレベルで非常に詳しく観測した。

つる座π1星の表面
VLTIがとらえた「つる座π1星」の表面(提供:ESO)

その結果、星の表面に対流セル(粒状斑)が数個だけ存在する様子がとらえられた。それぞれの粒状斑の大きさは約1億2000万kmもあり、星の直径の約4分の1にも達している。太陽系であれば太陽から金星までの距離に相当するほどの巨大さだ。

太陽の光球には約200万個の粒状斑が存在しており、その大きさは1500km程度である。つる座π1星の粒状斑はこれよりもずっと大きいが、この星の表面重力がかなり小さいために極端に大きな粒状斑が数個だけ発生するのだと考えられている。