隕石中の結晶に液体の水と有機化合物
【2018年1月16日 Berkeley Lab】
英・オープン大学のQueenie Chanさんたちの研究チームが、隕石中に含まれる塩の結晶から、液体の水や、炭化水素やアミノ酸といった有機化合物を発見した。「生命の起源と宇宙の複雑な有機物の起源にとって非常に重要な、液体の水と有機物が隕石中に両方見つかったのは、これが初めてのことです」(Chanさん)。
Chanさんたちが調べたのは、1998年3月に米・テキサス州に落下した隕石と、同年8月にモロッコ付近に落下した隕石内に見つかった結晶だ。これらの結晶が似ていることから、隕石の母天体となった小惑星同士が偶然出くわし、互いの物質が混ざり合った可能性が示唆されるという。結晶には衝突の証拠も見られる。
また、有機化合や宇宙の観測をもとにした手がかりから、結晶は準惑星「ケレス」に存在する氷や水を噴き出す火山の活動によってもたらされた可能性も考えられるようだ。横浜国立大学の癸生川陽子さんと京都大学の中藤亜衣子さんは米・ローレンス・バークレー国立研究所の実験施設や日本の高エネルギー加速器研究機構の放射光施設「フォトンファクトリー」でサンプルを調査し、成分を詳しく調べた。
「隕石に含まれていた有機物は原始的な隕石から見つかるものと似ていますが、より多くの酸素含有化学物質を含んでいます。他の証拠と合わせると、今回調査した隕石中の有機物の起源は現在または過去に水が豊富な天体と考えられ、太陽系初期に海があったかもしれないケレス由来という可能性が浮上します」(癸生川さん)。
今後は他の隕石中の結晶を調べ、これらにも水や複雑な有機分子が含まれているかどうかを明らかにしていく計画だという。「他の種類の有機化学物質がもっと見つかるかもしれません」(癸生川さん)。
〈参照〉
- Berkeley Lab:Ingredients for Life Revealed in Meteorites That Fell to Earth - Study, based in part at Berkeley Lab, also suggests dwarf planet in asteroid belt may be a source of rich organic matter
- Science Advances:Organic matter in extraterrestrial water-bearing salt crystals 論文
〈関連リンク〉
関連記事
- 2024/06/28 2024年7月7日 ケレスがいて座で衝
- 2023/12/15 リュウグウの岩石試料が始原的な隕石より黒いわけ
- 2023/03/17 2023年3月27日 ケレスがかみのけ座で衝
- 2023/02/27 リュウグウの始原的物質は太陽系で最初期にできたものかも
- 2023/02/20 南極隕石が明らかにした月の火山活動の変化
- 2023/01/18 隕石の有機物が物語る過去の火星環境
- 2022/12/14 隕石のアミノ酸はガンマ線で作られた可能性
- 2022/11/04 火星で観測史上最大の天体衝突
- 2022/10/28 2022年11月上旬 ケレスとしし座のトリオ銀河が大接近
- 2022/10/25 リュウグウ粒子からガス成分を検出
- 2022/04/21 衝突の記憶を刻む小惑星由来の隕石
- 2022/03/18 ドローンとAIで隕石を発見
- 2022/03/17 ケレスに衝突した隕石の大きさと数の謎
- 2021/11/18 2021年11月28日 ケレスがおうし座で衝
- 2021/11/15 地球の大気・海水の量は小惑星の大量衝突で決まった
- 2021/10/26 2021年11月上旬 ケレスとアルデバランが大接近
- 2021/08/17 隕石の「磁気の記憶」から読み解く、太陽系初期の歴史
- 2021/07/21 天体衝突が残す鉱石、わずか1億分の1秒で生成
- 2021/05/11 小惑星での有機物生成を再現する実験
- 2021/04/30 二酸化炭素が豊富な水を隕石中に初めて発見