今も短期間で変化するケレスの表面
【2018年3月20日 NASA JPL】
NASAの探査機「ドーン」のミッションでは、化学・地質学・地球物理学の各分野の観測データを組み合わせてケレスの姿を多角的に明らかにしている。これまでに得られたデータから、ケレスの地殻は厚さが約40kmで、水や塩のほかにおそらく有機物も多く含んでいることが示されている。
伊・天体物理学惑星科学研究所の2つの研究チームが、ドーンの可視光線・赤外線マッピング分光計(VIR)による観測で得られたデータをもとに、ケレスに関する新たな研究成果を発表した。
Andrea Raponiさんたちの研究チームは、ケレスにある直径約20kmの「ジューリン・クレーター」の北側の壁に水の氷が豊富に存在することを発見した。このクレーターは、これまでにケレス表面で水の氷が見つかっている十数か所の地点の一つだが、今回分析した2016年4月から10月までの観測データから、このクレーター北壁では6か月の間に氷の量が増加していることが示された。
「ケレス表面での氷の変化が初めて検出されました。公転によってケレスが太陽に近づき、また季節変化が生じることで、地下から水蒸気が放出されてクレーターの冷たい壁面で凝結します。その結果、表面に露出する氷の量が増えたと考えられます。暖かくなってクレーターの壁で地滑りが増えることも、新鮮な氷が露出する原因となっているかもしれません」(Raponiさん)。
一方、Giacomo Carrozzoさんたちの研究チームは、VIRによる観測データをもとに、炭酸塩の一種である炭酸ナトリウムが豊富な場所を12か所特定し、いくつかの地点について詳細な調査を行った。ケレスでは様々な場所で炭酸塩が見つかっており、たとえば明るい光点として注目されたオッカトル・クレーターの明るい領域の大部分を占めているのが炭酸ナトリウムだ。炭酸塩は液体の水が存在する環境で生成される物質で、似た組成の物質はオクソ・クレーターやアフナ山でも見つかっている。
Carrozzoさんたちの調査の結果、これらの場所に炭酸塩水和物(結晶構造の中に水分子が含まれている炭酸塩鉱物)という形で水が存在していることが明らかとなった。ケレスの表面で炭酸塩水和物が見つかったのは初めてで、これは地球以外のすべての惑星・準惑星を通じても初めての発見だ。ケレスの化学進化について新たな情報をもたらすと期待される成果である。
ケレス表面の水は、ジューリン・クレーターの北壁のように太陽光の当たらない影の部分にない限り、長期間にわたって安定的に存在することはできない。同様に、炭酸塩水和物も生成から数百万年経つと脱水する(結晶から水分子が失われる)と考えられている。「つまり、今回見つかったような炭酸塩水和物の豊富な場所は、最近起こったケレスの表面活動によって露出するようになったと考えられます」(Carrozzoさん)。
天体衝突や地滑り、氷火山の活動などで表面に露出したと思われる物質の組成が非常に多様であることから、ケレスの地殻の組成は一様ではないことが示唆される。こうした不均一性は、ケレスの地殻を形成したかつての海が凍りつく間に生じたか、あるいはもっと後の時代の大規模な天体衝突か、氷火山のマグマが貫入することでできたものと考えられる。
「氷の量が短い期間で変化している事実も、また炭酸ナトリウム水和物の存在も、ケレスで地質学的・化学的な活動が続いている新たな証拠となるものです」(同研究所VIRチームリーダー Cristina De Sanctisさん)。
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