数日間だけ明るく輝く爆発現象「FELT」
【2018年3月29日 HubbleSite/NASA/ノートルダム大学】
大質量の恒星は一生の最期に超新星爆発を起こして非常に明るく輝く。その光は2週間ほどかけて暗くなっていくが、一部には、ほんの2日ほどで急激に暗くなってしまうという不思議な性質を見せるものがある。「FELT(Fast-Evolving Luminous Transient、高光度の短期変光現象)」と呼ばれるこの種の現象について、従来の超新星のモデルでは、変光のタイムスケールやその様子が簡単には説明できていなかった。
FELTの正体は、ガンマ線バーストの残光、強力な磁場を持つ中性子星である「マグネター」によって増光を起こした超新星、Ia型超新星のなりそこないといった多くの理論が提唱されてきた。しかし、FELTは他の超新星と同様にいつどこで発生するかわからず、そのうえに数日しか輝かないため、発見例が少なく研究は困難であった。
米・宇宙望遠鏡科学研究所のArmin Restさんたちの研究チームは、NASAの系外惑星探査衛星「ケプラー」の観測データを用いて、FELTの性質に迫る研究を行った。
ケプラーの本来の目的は、天の川銀河内の系外惑星探しだ。ケプラーは、系外惑星が中心星の手前を通過する際に星の光が一時的に暗くなる様子を観測して惑星を発見するが、そのためには同じ空の領域を頻繁にかつ長期間にわたって観測して明るさの変化を記録し続ける必要がある。そして、このような探査の特徴は系外惑星だけでなく、FELTのように短期間で明るさが変わる現象を発見したり変光の様子を追ったりするのにうってつけなのだ。
Restさんたちは2015年にケプラーが観測したFELTのデータから、この現象の発生源が、超新星爆発を起こして崩壊した星であると結論付けた。この星は、ガスや塵からなる複数の外層で覆われており、その外層へ超新星の爆風が持つ莫大なエネルギーが津波のように突入する。すると、爆風のほとんどの運動エネルギーが即座に光に変換され、爆発的な増光が起こるという。「ケプラーのおかげで、見事な光度曲線が得られ、現象のメカニズムや爆風の特徴を絞り込むことができました。現象を説明するモデルとして他の可能性が排除され、厚い外層モデルにたどりつきました」(Restさん)。
「ケプラーの観測で得られた豊富なデータから、星が一生の終わりにどれほどの量の物質を放出したのか、爆発で発生した極超音速の爆風がどれくらいの速度だったのかといった特徴を解き明かすことができました。初めて高い精度でFELTのモデルをテストすることができ、理論と観測結果がつながりました」(米・カリフォルニア大学バークレー校およびローレンス・バークレー国立研究所 David Khatamiさん)。
ケプラーの観測からは、星が超新星爆発を起こす前の1年以内に外層を放出したことも示された。つまりFELTは、完全に爆発する前に小規模な爆発を起こして外層を吹き飛ばすような死にかけの星が起こす現象と考えられる。ほとんどわかっていない星の最期を理解するうえでも重要な情報だ。
〈参照〉
- HubbleSite:Kepler Solves Mystery of Fast and Furious Explosions
- NASA:Kepler Beyond Planets: Finding Exploding Stars
- Notre Dame News:Supernova may have ‘burped’ before exploding
- Nature Astronomy:A fast-evolving luminous transient discovered by K2/Kepler 論文
〈関連リンク〉
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