- 筑摩書房
- A6判、421ページ
- ISBN 978-4-480-09155-0
- 価格 1,575円
すばらしい本が復刊されて評者は非常に嬉しい。評者は1971年の初版をすぐ購入して読みふけり、今でも家の書棚に、こだわり天文書評第一回でご紹介した「ケプラー疑惑」と仲良く並んでいる。今でもこの2冊は、ケプラーに関する最良の2冊だろうと評者は考えている。
ただ、前書きの訳者の言によると、原書の一部が省かれたとある。ことによると、それが「ケプラー疑惑」の主題部分になったのかも知れない。従って、この2冊は平行して読むと、互いに補完されるのではないだろうか。
ともかくまったくのノンフィクション・ドキュメンタリーで、おもしろい本だ。もちろん、筆者独特の史観にもとづく意見がそこかしこに見られるが、全体として、ケプラーの生涯を忠実に再現していて、その人となりがよく理解できるのである。
著者は歴史家・伝記作家ではなく、1920年代にウィーン大学工学部で物理学を勉強した人だ。だが、その後、各国を放浪したあと、科学ジャーナリストとなり、作家としても科学哲学者としても評価を残した人である。1983年没。それだけに、その分析は鋭く、明晰である。
評者は、本書と、本書の参考文献にあげられているアーミティジ著「太陽よ、汝は動かず」(岩波新書1962年刊)青木靖三著「ガリレオ・ガリレイ」(岩波新書1965年刊)ダンネマン著「大自然科学史全10巻+別冊」(三省堂1954年刊)(いずれも絶版)を、科学史上の最高の名著として、もし古書店で見かけたらぜひ購入をおすすめしたい本としておきたい。それほど良い本が復刊されたのだ。