月刊ほんナビ 2024年4月号
📕 「学びを助ける宇宙の教科書」
紹介:原智子(星ナビ2024年4月号掲載)
子どもの頃、4月に新しい教科書を手にした思い出があるだろう。本好きだった筆者は急に増えた自分専用の“書籍”がうれしくて、どんな教科もまず“読書”を楽しんだ。しかし、だんだん難解になっていく理数系の読書は迷宮入りし、授業でも謎が解けないまま終了することがしばしばあった。今回は、楽しく読める教科書と、専門的なハイレベルの教科書を紹介しよう。
まずは「ニュートン科学の学校シリーズ」から『宇宙の学校』『地球の学校』『太陽系の学校』の3冊。このシリーズは科学雑誌『Newton』のジュニア版として創刊された児童書で、科学に関する様々なテーマを取り上げている。天文以外には飛行機・算数・恐竜など多岐にわたり、今後も増えるようだ。内容は、それぞれ「宇宙」「地球」「太陽系」について、1つの話題を見開き2ページで解説していく。ふりがな付きだから小学生でも読みやすく、「ぶートン」と「ウーさん」というかわいいキャラクターも登場して親しみやすい。
『宇宙の学校』では、1時間目「私たちのすむ太陽系」、2時間目「星のきほん」、3時間目「銀河のきほん」、4時間目「宇宙はどうやって生まれた? 未来はどうなる?」、5時間目「宇宙へと飛びだす」を学ぶ。途中に「休み時間」もあり、関連情報を紹介している。
『地球の学校』の1時間目は「地球のしくみ」、2時間目は「地球は奇跡の星」、3時間目は「地球はこうして生まれた」、4時間目は「つぎつぎに出現する生命」、5時間目は「地球は海のある惑星」、6時間目は「人間活動でかわる地球」。地球の歴史を学び、未来を考える内容だ。
『太陽系の学校』は、1時間目「太陽系と母なる太陽」、2時間目「わたしたちの地球と月」、3時間目「地球に似た地球型惑星」、4時間目「巨大なガス惑星と氷惑星」、5時間目「そのほかの太陽系天体たち」、6時間目「太陽系の誕生から死」について解説。
次は「文系のためのめっちゃやさしいシリーズ」から『銀河宇宙』。こちらも1時間目から4時間目まであり、「東京大学で天文学を教えている先生」と「理系アレルギーの文系サラリーマン(27歳)」の会話で授業が進む。まずは「私たちが暮らす天の川銀河」から始まり、最後は「銀河の衝突と大規模構造」まで、文系の人にもイメージしやすい言葉と図解で教えてくれる。このシリーズも続々発刊されているから要注目だ。
ここからは、大学で学ぶレベルの専門的な教科書になる。「シリーズ現代の天文学」の第2版から『天体物理学の基礎Ⅰ・Ⅱ』について。両書とも、様々な天体現象を深く理解するための基礎過程や基礎方程式を教授するテキストである。『Ⅰ』は「力学や熱過程などの基礎理論」「物質」「流体」をあつかっている。2009年の初版からは、新たな理論的知見に基づいて表現を変えたり、ヒッグス粒子などの最新情報を加えたりしている。『Ⅱ』は「重力」「プラズマと電磁流体」「放射の生成と散乱過程」をあつかっている。2008年の初版に、重力波の直接観測などを加えた。
『輻射電磁流体シミュレーションの基礎』は、「シリーズ宇宙物理学の基礎」の第5巻。天体の主要な構成要素であるガスを記述する磁気流体力学や輻射流体力学の数値シミュレーションに焦点を当てた入門書だ。著者によると「理屈はともかく本書を読めばコードを書ける」ように心がけたので、「数値計算法の背景にある数学的な説明や物理的な詳細、数値解法の一般論にはできるだけ深く踏み込まないようにした」という。また、「数値計算の猿知恵」というコラムを用意して、コードの整理方法・デバッグの方法・計算が壊れたときの対応などのノウハウを紹介している。とても実践力を強化しており、学生は大いに役立つだろう。