すばる望遠鏡/原始星 L1551-IRS5 からの2本のジェット

【1999年8月19日 国立天文台国立天文台ハワイ観測所

国立天文台ハワイ観測所は8月19日、すばる望遠鏡による8月の画像公開を行った。同観測所では6月以降、ほぼ一ヶ月おきに最新画像の公開を行っている。以下はプレスリリース「すばる望遠鏡/1999年8月の画像」からの引用である。

「原始星L1551-IRS5からの2本のジェット」

L1551_s.jpg(159KB)

天  体  名: 原始星L1551-IRS5からの2本のジェット
使 用 望 遠 鏡: すばる望遠鏡(有効口径8.2m)、カセグレン焦点使用
観 測 装 置: CISCO (近赤外線カメラ)
フ ィ ル タ ー: Jバンド (1.25 ミクロン)、K'バンド (2.15 ミクロン)
カ ラ ー 合 成: 青 (J+K')、緑 (Jバンド)、赤 (K'バンド)
観 測 日 時: 世界時1999年1月14日
露 出 時 間: 160秒(Jバンド)、22.5秒(K'バンド)
視     野: 約1分角
画 像 の 向 き: 北が上、東が左
位     置: 赤経(J2000.0)=4時31分34秒、赤緯(J2000.0)=+18度8分5秒 (おうし座)

L1551−IRS5は、地球から約450光年離れた2個の生まれつつある星(原始星)から成る連星系と考えられている。図は、画像中央やや左の白い星雲から 右下の方向へ、2本のジェット(緑色)が平行に放出されている様子を示している。ハッブル宇宙望遠鏡の観測からジェットが2本あることは知られていたが、すばる 望遠鏡は地上望遠鏡としては初めて、高い解像力によりジェットを2本に分離する観測に成功した。解析の結果、ジェットは鉄イオンの出すスペクトルで光っており、 原始星から約1500天文単位(1天文単位は太陽と地球の平均距離であり、約1.5億km)の距離のところまで伸びていることがわかった。これら2本のジェッ トは、2個の原始星からそれぞれ出ていると考えられている。 白い星雲は「赤外線反射星雲」といわれ、原始星の出す強い赤外線を反射して光っ ている。またジェットを包み込むように淡く輝いているのは、原始星からの星風により原始星をとりまく暗黒星雲中に空けられた空洞の壁が、原始星からの赤外線を 反射して光っているためである。このようなジェットは、原始星の両極方向に出ると考えられている。L1551−IRS5の場合、反対向きのジェットは暗黒星雲 に隠されて見えておらず、我々の方を向くジェットのみが見えているとされている。

説明文
説明文
NHKハイビジョンカメラ
NHKハイビジョンカメラからキャプチャーした画像

<参考資料>
すばる望遠鏡ファーストライト
すばる望遠鏡・6月の画像
すばる望遠鏡・7月の画像
すばる望遠鏡とNHK超高感度ハイビジョンカメラによる映像