火星の最接近

【2001年6月25日 国立天文台天文ニュース (451)

6月14日に火星が衝になり、明日の6月22日8時(日本時)に火星が地球にもっとも接近します。最接近時の地球との距離は0.45016天文単位(6734万キロメートル)、明るさはマイナス2.3等です。残念ながら日本は梅雨の最中ですが、もし晴れ間があったら見てみましょう。夜中の0時前後に南の空に明るく輝いています。視直径は20.8秒もありますから、仮に100倍の望遠鏡で見たとすれば、計算上は肉眼で見る満月より大きく見えるはずです。しかし、現実にはそれほどには感じられずに、ぼんやりした円盤像が見えるだけで、ガッカリすることが多いようです。何かの模様が認められるようなきれいな火星像を見るには、何よりも良好なシーイングが必要です。

火星と地球は平均して2年と50日ごとに衝になり、距離が接近します。しかし、火星軌道は離心率が大きく、かなりつぶれた楕円なので、最接近の距離は場合によってかなり違います。火星が近日点近くにあるときに、言い換えれば8月28日頃に衝になれば、大接近になります。今年の接近もかなり近づく方の部類に入りますが、2年後の2003年8月28日には0.37271天文単位にまで近づく史上希な大接近になります。ここ2000年間はそれ以上に近づいた例がなく、次回にそれ以上に近づくのは2287年8月29日です。このときは0.37224天文単位にまで近づきます。なお、火星軌道は黄道面に対して1.85度ほど傾いているため、一般に最接近の日は衝の日と一致せず、10日くらいずれることもあります。

火星は、最近の惑星探査の主要目標で、生命の存在を探ることも目的のひとつにして、NASAは成功、失敗を含めいくつもの探査機を送りこんでいます。日本も1998年7月に火星探査機「のぞみ」を打ち上げました。当初は2001年10月に火星到着の予定でしたが、バルブ系の不調で燃料を使いすぎたため、予定を変更せざるを得なくなりました。いまのところ、2002年12月と2003年6月に地球による2回のスイングバイをおこない、2003年末か2004年始めに火星の周回軌道に投入する予定です。そんなことを考えながら、火星を眺めるのも一興でしょう。

今回の最接近は上記のように6月22日ですが、この日だけ特別に近いわけではなく、その前後数週間はあまり大きく距離が変わりません。10日たっても距離の変化はたった1パーセントです。ですから、最接近の当日に観測できなくても、晴れ間を待って観察すればいいでしょう。

<参照>

  • Meeus,J. "Astronomical Tables of the Sun,Moon,and Planets" Willmann-Bell,1983

<関連>


追加:

国立天文台・天文ニュース (449)「アフリカでの皆既日食」で、インターネット中継がある旨書きました。

日本関係での中継を調べた範囲では、以下の3つがありました。

  • ライブ!エクリプス実行委員会によるインターネット中継
    URL=http://www.live-eclipse.org/
  • インパク:ぐんまパビリオンによるインターネット中継(インパクは終了いたしました)
    URL=http://www.inpaku.go.jp/gunma/ecl0621/index-j.html
  • 2001 TOTAL SOLOR ECLIPSE from AFRICAによるインターネット中継
    URL=http://www.media-i.com/Eclipse2001/index-j.html

海外でも数箇所で、中継があるようです。