地球接近小惑星の数
【2001年12月20日 国立天文台・天文ニュース (506)】
リニア計画による3年間の観測結果から、直径1キロメートル以上の地球接近小惑星の数は1227個程度であることが推定されました。
地球に接近し、衝突の危険性を潜在的にもっている小惑星を地球接近小惑星(Near-Earth Asteroid;NEA)といいます。具体的には、地球軌道に0.3天文単位以内に近付く軌道をもつ小惑星が地球接近小惑星(NEAs)です。長い期間にこれらの天体が地球に衝突する確率を計算するには、NEAsの数が重要な要素になります。そして、衝突の危険を回避するため、NEAsの捜索があちこちで精力的におこなわれています。
リニア(Lincoln Near-Earth Asteroid Research;LINEAR)計画もその種の捜索プログラムのひとつで、マサチューセッツ工科大学リンカーン研究所が運営しています。この捜索の過程でたまたま発見した彗星にはすべて「リニア彗星」の名がつき、それによってご存じの方も多いことでしょう。でもリニア計画は本来NEAsを探すのが主目的なのです。
3年間のリニア計画実施により、600夜にわたり50万平方度(全天球面積の約12倍)の天空が捜索され、その間に11万個以上のメインベルトの小惑星と、657個のNEAsが新たに発見されました。マサチューセッツ工科大学のスチュアート(Stuart,J.S.)はその結果を整理し、種々の条件で観測にかからなかったNEAsがあったことを考慮して補正をおこない、その結果、絶対等級18等より明るいNEAsの数を1227個(プラス170個、マイナス90個)と推定しました。この結果は、スペースウォッチ観測の結果からエール大学のラビノビッツ(Rabinowitz,D)たちが推定した750個(プラスマイナス150個)や、最近コーネル大学のボック(Bottke,W.F.)たちが推定した910個(プラス100個、マイナス120個)より多少多くなっています。しかし検出したNEAsの数が多いこと、軌道要素の分布に推定をとり入れていないことなどの条件を考慮すると、今回の結果の方がより精度が高いと考えられます。なお、絶対等級が18等より明るい小惑星は、反射率によって異なりますが、およそ直径1キロメートル以上のものに相当すると考えていいでしょう。
もっと小さいNEAsの数はさらに数が多く、今回の結果を小さい方に延長しますと、衝突して地球にかなりの被害をもたらすおそれのある絶対等級23等(直径100メートル)より明るいNEAsの数は12万個以上も存在することになります。