広瀬さん発見の超新星2002apは極超新星だった

【2002 年 2 月 6 日 国立天文台天文ニュース (522)

天文ニュース519でお伝えした「うお座」にある渦巻銀河M74に出現した超新星2002ap が、超新星でも特殊な「極超新星」であることがわかってきました。これまで発見された極超新星のなかで、今回の天体はもっとも近くにあり、今後の詳細な研究が期待されます。

群馬県立ぐんま天文台の衣笠健三(きぬがさけんぞう)さんと河北秀世(かわきたひでよ)さんは、この超新星の発見が公表された当日の1月31日夕方18時半(日本時、以下同様)から、この超新星のスペクトル観測を始めました。また、岡山県美星町立の施設である美星天文台の綾仁一哉(あやにかずや)台長と川端哲也(かわばたてつや)さんも同日20時過ぎから、やはりこの超新星のスペクトル観測を行ないました。取得されたスペクトルを解析した九州大学の山岡均(やまおかひとし)さんは、その特徴が、これまでに観測された極超新星の例に非常に似通っていることを見いだし、国際天文学連合に報告しました。この報告は、同様の結論を得たヨーロッパ(スペイン領カナリア諸島のラ・パルマ天文台の観測)およびイスラエルからの報告とともに、2月1日朝5時発行のIAUC 7811で公表されました。発見からスペクトル観測、そしてその公表が非常に速く行なわれたことが特筆されます。

極超新星とは、通常の超新星よりも一桁も大きな爆発エネルギーを持つものです。モデル計算によれば、生まれた時に太陽の40倍ほどのたいへん重い星が進化して、内部では鉄の中心核ができるまで核融合反応を繰り返す一方、水素が多い外層部やヘリウム層などが星表面から流れ出して失われてしまった星が、中心核の重力崩壊によって爆発したものと考えられています。爆発時に大量の放射性元素を生みだし、それをエネルギー源として、より明るく輝き、また膨張速度も通常の超新星よりも高速です。星は重いほど数が少ないため、極超新星はたいへん稀なものです。

これまでに知られている極超新星で有名なものに、超新星1998bwがあります。天文ニュース190でも紹介しましたが、この天体は超高エネルギーの電磁波である「ガンマ線」を数秒間放射する天体現象「ガンマ線バースト」の源でもあると考えられています。また、先日超新星を発見(天文ニュース517)された北海道名寄市の佐野康男(さのやすお)さんが1997年に発見された超新星1997efも、数少ない極超新星の例として詳細に研究が進められています(天文ニュース144148)。今回の超新星2002apはこれらの例よりも格段に近くの天体ですので、今後さまざまな手段で観測し、また理論的にも研究することで、極超新星現象を深く理解できると期待されています。

ぐんま天文台で撮影したスペクトル:http://www.astron.pref.gunma.jp/images/gcs/SN2002ap.gif
美星天文台で撮影したスペクトル:http://www.town.bisei.okayama.jp/bao/astro/sn/sn2002ap.gif