ESO、天の川銀河系の中心のすぐ周りをめぐる星の観測に成功

【2002年10月24日 ESO Press Release

南米チリにあるESO(ヨーロッパ南天天文台)・パラナル観測所のVLT(The Very Large Telescope)を使って天の川の中心を観測していた研究者たちのグループが、銀河中心にある超巨大ブラックホールからたった17光時間しか離れていないところを通り過ぎた星の観測に成功した。

(銀河中心の画像)

8.2m望遠鏡で撮影した天の川の中心の画像。3つの異なる赤外線波長の画像を合成している。中心の矢印のところがブラックホール候補の天体であるSgrA*の位置(提供:ESO / MPE

天の川の中心はいて座の方向にあり、地球から約2万6000光年離れている。10年間にわたって天の川の中心近くにある3つの星を観測することで、中心付近には半径10光日(およそ2600億km)の領域に太陽の300万倍の質量がつまっている天体があることがわかっていた。この天体はSgrA*と呼ばれており、強力な電波やX線を放射している。おそらくSgrA*はブラックホールだと考えられていたが、これまでの観測だけでは他の種類の天体である可能性も否定しきれなかったのだ。

今回、研究グループは、昨年末にVLTのYEPUN望遠鏡に取り付けられたNACOという装置を使って銀河の中心を観測した。そして、S2という星の運動がSgrA*の近くでスイング・バイしているようすをとらえたのだ。この運動を詳しく調べることで、恒星の軌道や運動の中心にある天体の質量などを計算することができる。その結果、S2は今年の4月頃に中心の天体からわずか17光時間(180億km、別の言い方をすると、太陽から冥王星までの平均距離の約3倍)の距離を秒速5,000kmという高速で通り過ぎたことがわかった。さらに、中心の天体の質量がおよそ太陽の260万倍であることも計算から求められた。これにより、天の川(さらには他の銀河)の中心に超巨大ブラックホールが存在することがほぼ確実になったのである。

次の大きな疑問は、このような超巨大ブラックホールがどのようにして(中心に1つだけ)形成されたのか、ということである。大型望遠鏡と最新の装置や技術を使った観測により、こういった謎も解き明かされていくだろう。