無人火星探査車スピリットが初の土壌分析
【2004年1月21日 JPL News Release】
NASAの火星探査車「スピリット」が火星に着陸してから2週間ほどが経過したが、いよいよ本格的な調査活動が始まったようだ。土壌成分の分析機能を始動させ、にわかに火星の岩石研究に期待が高まってきた。関係者は、スピリットが順調な滑り出しを見せていることにうれしさが隠せないようすだ。
スピリットはすでに、たった一度の送信で、100メガビットもの大容量のデータを送信してきている。送られてきたデータの解析が始められているが、早くも「オリビン」(橄欖(かんらん)石)という鉱物の一種が見つかるという興味深い結果が得られた。鉄分など鉱物中の成分が分光計によって認識されると、鉱物ごとに固有の分光パターン(人間の指紋のようなもの)を見せるのだが、そのパターンからオリビンの存在が明らかになったのである。
オリビンは、風化が激しいと通常は残らない物質である。つまり、オリビンが存在しているということは、土壌で風化が起きていないことを示唆していると考えられる。この場合、火星の土壌の粒子は火山性の物質であるという証拠になるかもしれない。別の可能性としては、今回分光計が当てられた土の層が特に薄くかったために、実際には土の下にある石に含まれるオリビンを検知したのかもしれないということだ。
また、ロボットのアームを土壌に押しつけてみたところ、驚いたことに土壌には何の変化もなかった。このことについて研究者は、硫黄化物や塩化物によって土壌の細かい粒子が固められているのではないかと考えている。というのも、一番多く見つかっているケイ素と鉄に続いて、硫黄や塩素などが検出されているからだ。これらの塩類は、水の蒸発に伴って残されたものか、または溶岩などの噴出によってできたものだろうと話している。
今回調べられた土壌はスピリットの着陸地点で生じたものではなく、おそらく、火星上で起きる嵐によってあちこちにばら撒かれた土の一部と考えられている。スピリットがその機能をフルに使って調べる次のターゲットは、ある特定の範囲で生じ、いまだそこに残っていると思われる岩石になる予定だ。引き続きスピリットは、アディロンダック(Adirondack)と名づけられたフットボールサイズの岩を、顕微鏡カメラと2つの分光計を用いて分析する予定である。