プレアデス星団までの距離が高精度で測定された
【2004年1月28日 JPL Press Releases】
NASAのジェット推進研究所(JPL)とカリフォルニア工科大の研究チームが、プレアデス星団(M45)の中にある「アトラス」という星までの距離をかなり高い精度で測定することに成功した。干渉計による観測の結果によれば、アトラスまでの距離は434光年から464光年の間だということだ。ずいぶん幅があるように思えるが、天文学の基準で考えれば「高精度」と言える。
プレアデス星団は地球からおよそ400光年離れたおうし座の方向にあり、青白く輝く若い星々が数百個集まってできている天体だ。日本では「すばる」の名でよく知られている。プレアデスという名前の由来は、ギリシャ神話に登場する7人姉妹「プレアデス」にちなんでいる。姉妹たちの星々や父「アトラス」、母「プレイオネ」などの星々は肉眼でも容易に確認できるので、古代から知られていた天体だが、われわれはつい最近まで、その正確な距離を知らなかったのだ。
星までの距離については、古典的な方法として年周視差を利用した三角測量の方法が知られている。これは、地球の公転によって天体の見かけの位置が(遠方の天体に対して)ずれることを利用するものだが、比較的近い星でさえもおおまかな距離しか割り出すことができない。
今回同チームが研究を開始したきっかけは、ヨーロッパの位置観測衛星「ヒッパルコス」が示したプレアデス星団までの距離が近かったことに疑問を抱いたことだ。星までの距離を測定する別の方法として、星のモデル計算から得られる星本来の明るさと見かけの明るさとを比較し、暗くなった割合から距離を求めるというものがあるが、視差を利用して距離を測定したヒッパルコスのデータはこの方法による距離の測定とあわなかったのである。
チームは、果たしてヒッパルコスのデータがおかしいのか、それとも現在の星の進化についての理論が間違っているのかを確かめようと、さらに別の方法でプレアデス星団までの距離を測定した。ウィルソン山の干渉計やパロマー天文台の干渉計でアトラス連星系の運動のようすを観測し、そのデータを用いてアトラスまでの距離を測定した。そして、ヒッパルコスのデータが間違っていたこと、同時に星の進化モデルが正しかったことを証明したのだ。
干渉計はまだ新しい技術であり、今後さらにその役割の重要性が増すだろう。2基の10m望遠鏡によるケック干渉計のほか、2009年にはNASAによる宇宙干渉計ミッション(Space Interferometer Mission: SIM)が予定されており、現在より数百倍も高い観測精度で銀河系内の星までの距離や位置を測定したり、近くの星に地球サイズの惑星が存在しないかどうかを探したりする予定になっている。今後がひじょうに楽しみな研究分野だ。