おとめ座銀河団の高温ガスの影響で崩壊が進む銀河NGC 4402
【2004年6月22日 NOAO News】
おとめ座銀河団の中を動いている楕円銀河NGC 4402で、銀河団中の高温ガスと銀河との衝突によって銀河の星形成物質が奪われつつある証拠が捉えられた。
NGC 4402は5000万光年以上かなたにある銀河で、おとめ座銀河団の真ん中あたりに位置している。キットピーク天文台のWIYN 3.5メートル望遠鏡によって捉えられたのは、NGC 4402がおとめ座銀河団の中心へと動いていく際に、銀河団中に広がる数百万度の高温ガスの影響を受け、銀河にある大量の冷たいガスやちりが奪われつつある様子だ。これらのガスやちりは新しい星の材料となるものだが、それを失うことは、銀河の死を意味する。
このガスとの衝突はきわめて破壊的な過程で、銀河の進化や星形成に多大な影響を及ぼしていると考えられている。実際の観測で捉えられたのは、明らかな崩壊現象というよりは状況証拠といったようなものだ。たとえば、ちりの円盤が切り詰められているように見えたり、円盤が弓形に曲がっていたり、本来ちりで隠されているはずの生まれたばかりの青い星の姿があらわになっていたりする様子が写し出されている。
さらに珍しい特徴として、NGC 4402の円盤の南側にはフィラメント構造が見られる。熱い銀河団のガスによって銀河の外層がはがされ、ちりが吹き飛ばされているのだ。銀河の左端のフィラメントは、銀河団の風によって星形成が引き起こされたか、または風によって以前から存在していた星形成領域が露出した部分だろうと考えられている。
今回の観測結果は、広く支持されてきた銀河団における銀河進化の過程が実際に起こっていることを示してくれるものだ。銀河は、銀河団の影響を強く受け、星形成や破壊など大規模な変化をしているのである。