ハッブル宇宙望遠鏡が偶然に捉えた、個性的な複数の銀河の姿
【2004年7月28日 Hubble Newscenter】
NASAのハッブル宇宙望遠鏡が偶然捉えた、美しい複数の銀河の画像が公開された。この画像は2003年9月に南天の「ろ座」の方向を捉えたもので、衝突によって引き伸ばされたと考えられる腕をもつ黄色い渦巻き銀河(下)や、青く若い銀河(上)、そのほか赤い銀河や小さな銀河などさまざまな銀河がその姿を見せている。
もっとも注目すべきなのは、画像中心に見られる青い弧だ。これは、遠方銀河の姿が重力レンズ効果によってこのような形に引き伸ばされて見えているものである。重力レンズ効果を引き起こしているのは60億光年離れた楕円銀河で、赤い色は銀河に含まれる星が古く低温であることを示している。一方、青い弧の姿を見せている銀河は100億光年かなたにある天体で、ビッグバンから数十億年しか経っていない頃の宇宙に存在する銀河だ。青い色から、この銀河には高温の若い星が含まれていることがわかる。
重力レンズ効果は、銀河中に存在する暗黒物質などを含めた質量を直接決定するための有効な手段で、重要な情報をもたらしてくれる。銀河を構成している物質は、星、ガス、ちりだけでなく、われわれの目に見えない暗黒物質がその大部分を占めているのだが、重力レンズ効果を観測すれば、暗黒物質を含めた銀河の質量がわかるのである。