ドーナツ状の構造に隠された巨大ブラックホール
【2004年8月9日 ESA News】
ESA(ヨーロッパ宇宙機関)のX線宇宙望遠鏡XMMニュートンとガンマ線観測衛星インテグラルによって、大質量のブラックホールを取り囲んでいると考えられる数百光年サイズのドーナツ状のガス雲(トーラス構造)が高い精度で観測された。
われわれの天の川銀河を含めた銀河の中心には超巨大ブラックホールが存在していると考えられている。これらのブラックホールは高温の薄い降着ガス円盤に取り囲まれていて、さらに外側はドーナツ状のトーラス構造になっているようだ。このトーラスがブラックホールや降着円盤を隠しているように見える銀河は「セイファート2型の銀河」と呼ばれており、可視光ではかすかにしか見えないことが多い。しかし、かすかにしか見えないのは、そもそもブラックホールの活動が弱いためではないかとする説もあった。
今回観測が行われたのは、6500万光年離れたわれわれの近傍銀河の1つで、おとめ座にあるNGC 4388だ。XMMニュートン衛星とインテグラル衛星によって捉えられたものは、降着円盤から放たれるX線とガンマ線がトーラスを貫通してきたものだった。専門家によれば、このトーラス内部からの放射を捉えることで、ブラックホールに関連する現象が見えてくるのだという。実際に、ブラックホールの周辺で生み出されるさまざまな波長の光は、それぞれ違ったプロセスを経ていることがわかり、どのように降着円盤からエネルギーが放出され、トーラスに吸収されるかが明らかになったという。
今回の観測は、ブラックホールとその降着円盤、さらにドーナツ状のトーラスとの関係について重要な情報をもたらした。現在考えられているトーラスモデルについても、いくつかの点で支持する内容となっているとのことだ。