ブラックホールの産声、50ミリ秒のガンマ線バーストを捉えた
【2005年5月18日 EBERLY COLLEGE OF SCIENCE NEWS】
持続時間50ミリ秒という非常に短いガンマ線バーストが初めて捉えられた。これはブラックホールが誕生したことを示しているが、専門家の間では、そこに至るまでに何が起きたのかが議論となっている。今のところ、ブラックホール同士か、または中性子星同士による衝突が原因としてもっとも有力だ。
NASAのスウィフト(SWIFT)衛星にとって、2秒以上続くような「長い」ガンマ線バーストはお手の物だが、今回のような50ミリ秒という「短い」バーストの観測は初めてのことだ。スウィフトは、このバーストの感知から1分もしないうちに搭載された望遠鏡を向け、残光を捉えた。今までそのあまりの短かさのために観測が不可能だった「短い」バーストを観測することがスウィフトの目的であり、打ち上げから数ヶ月で達成することとなった。
捉えられた残光には、犯行現場に残された証拠のごとく、バーストを起こした原因に関する情報が含まれている。2秒以上続く「長い」ガンマ線バーストは極超新星(通常の10倍以上のエネルギーを放出する超新星)が原因と見られるが、残光は何日も続く。これに対し、今回の「短い」バーストの残光は5分で消えてしまった。これは、大質量星が寿命を迎えた後に残るブラックホール(または中性子星)同士の衝突のパターンと一致するという。このような天体同士が衝突する場合、残光を持続させるほどのガスやチリは残されないと考えられるからである。
また、GRB 050509Bと呼ばれる今回のガンマ線バーストは、われわれから約27億光年離れた銀河の近くで起きたと考えられている。27億年は、宇宙年齢に比べれば短く、それだけこの銀河が年老いていることを示している。このことも、衝突説を支持している。なぜならば、ブラックホールや中性子星同士が衝突するほどまでに近づくには非常に長い時間がかかるからだ。一方「長い」バーストは、遠方にある、すなわち宇宙誕生からあまり時間の経っていない銀河に存在するような、若く巨大な星が起こす極超新星が原因と見られている。
なお、リリース元では、中性子星同士の衝突のシミュレーションの動画が公開されている。