恒星の表面でも「潮の満ち引き」が起きていた

【2005年5月25日 Canadian Astronomical Society News Releases

カナダ初の宇宙望遠鏡を搭載したMOST(Microvariability & Oscillations of STars)衛星を使った観測で、非常にめずらしい惑星系が観測された。この連星系では、惑星が恒星に対して強い影響を与えていて、まるで月が地球の表面で潮の満ち引きを起こすのと同じように表面のガスを動かしている。このような連星系の観測は、初めてのことだ。

MOST衛星が捉えたのは、うしかい座τ(タウ)星で、惑星を持つことが明らかになっている恒星だ。観測の結果、うしかい座τ星そのものの明るさの変化が惑星の公転と一致していることが明らかになった。どうやら、表面のガスが惑星の引力に引きつけられて、惑星の公転と同じ周期で自転するようになったらしい。われわれが目にする身近な例では、月が地球に対していつも同じ面を見せている。このようにより大きな恒星や惑星の公転周期が小さな天体の自転周期とが一致しているのが、通常のケースだ。今回のように恒星の周りを回る惑星が恒星に力を及ぼしている様子は、専門家にとっても初めて見るものだ。このような現象としては、地球より小さい月が地球表面の水を引力で引っ張り、潮の満ち引きを起こしている例がある。

観測された惑星は恒星の1%以下の質量しかないのに、恒星の表面のガスをとらえている。その理由は、惑星の軌道が、地球と太陽までの距離の20分の1と非常に近いことと、惑星の質量が少なくとも木星の4倍と、惑星としては並はずれて大きいことだ。惑星は、直接は観測できないが、惑星の重力により、恒星が「ぐらついて」いるのが1997年に観測され、その存在が確かめられた。と、同時に公転周期が3.3日であることも明らかになっていた。

約10年前、ペガスス座51番星の周りを回る惑星が発見された。この惑星は恒星のすぐ近くを回り、しかも大きさは木星と同じ程度であった。このような惑星は「ホットジュピター」と呼ばれ、惑星系の誕生に関する研究に大きな影響を与えてきた。うしかい座τ星の惑星はペガスス座51番星の惑星より親星(恒星)に近く、質量も大きいので、今後の観測結果が太陽系の形成理論研究にも役立つことは間違いない。観測チームも、日々MOST衛星から届くデータに興奮の色を隠せないようだ。

なお、リリース元では、連星系のようすのシミュレーション動画が公開されている。