星が星を産む、ηカリーナ星雲の内部

【2005年6月7日 Spitzer Press Releases

スピッツァー宇宙望遠鏡が赤外線で撮影した画像で、η(エータ)カリーナ星雲の中に潜む星の胎児たちが捉えられた。この星たちを産むきっかけとなったのは、同じく星雲の中にある巨大な星、ηカリーナ(りゅうこつ座η星)とその兄弟星たちだ。

(ηカリーナ星雲の画像)

赤外線で撮影されたηカリーナ星雲のSouth Pillarとよばれる柱状構造の領域、左下の小さな画像は、同領域の可視光画像。クリックで拡大(提供:NASA/JPL-Caltech/N. Smith (Univ. of Colorado at Boulder)

画像は、ηカリーナ星雲の"South pillar"(南側の柱)と呼ばれる領域を写したもの。この星雲の中でもっとも有名な星、りゅうこつ座η星は、赤外線では明るく輝き過ぎるので写真には入ってないが、その光が画像上部から差し込んでいるのがわかる。りゅうこつ座η星は太陽の100倍もの質量をもつ巨大な星であり、やはり質量の大きな兄弟星とともにηカリーナ星雲で生まれ、紫外線と恒星風を放ち続けてきた。これが星雲を切り裂き、画像に見られるようにりゅうこつ座η星を向くような「柱」を作り出すとともに、ガスを圧縮して新しい星を誕生させた。こうして生まれた星もまた、星雲の外側のガスを圧縮するので、まさに星が星を産む状態となる。

スピッツアーがとらえた赤外線をもとに作られたこの疑似カラー画像は、りゅうこつ座η星とその兄弟から始まる「星たちの家系図」といえる。子孫に当たる星は、様々な大きさで、画像では白や黄色に写っている。その「ゆりかご」であるちりは赤、ガスは緑、そして星雲よりも手前にある星は青く表現されている。

ηカリーナ星雲を可視光で捉えた画像(左下の小画像)は、これとは全く異なるものとなる。ちりが光を吸収してしまうため、複雑な星雲内部の構造が見られず、暗い世界となる。スピッツァー宇宙望遠鏡のもつ赤外線の目は、厚いちりの内部を見通し、より深い場所にある柱状構造とともに星の胎児をもわれわれに見せてくれる。


ηカリーナ星雲は、りゅうこつ座ηの周りに広がる散光星雲。りゅうこつ座ηは、質量が太陽の約100倍という巨大な星で、ガスに覆われているため、赤外線を強く放っている。明るさも赤外線波長を含めて太陽の500万倍に達している。(最新デジタル宇宙大百科より)